
愛犬を襲った「免疫介在性溶血性貧血」(IMHA)体に現れた異変とは……?
「うちの子は元気だし、病気になんてならない」
飼い主であれば、誰だってそう願いたいはず。けれど、動物も歳をとります。人間と同じように、歳をとるにつれて病気のリスクも高まるのです。
そんなことはわかっていても……元気いっぱいのペットの姿を見て病気を連想するなど、そうないかもしれません。私はそうでした。
愛犬を襲った恐ろしい病「免疫介在性溶血性貧血」(IMHA)

(クッキーの食べかすを口につけるももちゃん)
2013年11月、私は愛犬のシーズーを病気で亡くしました。女の子で、名前はもも。私の家ではじめて飼った犬で、人の気持ちをよく理解できる優しい子でした。お散歩が大好きで、食欲旺盛。骨格も筋肉もしっかりしていて、まさに健康体。
そんなももが、14歳を迎える前に亡くなりました。ももを襲った病は、「免疫介在性溶血性貧血」。難しい病名ですが血液の病気で、緊急性が高いものです。
免疫介在性溶血性貧血は、赤血球の表面にある「免疫抗体」が結合し、赤血球が破壊されることが原因で起こる貧血。中年齢期の雌犬がかかることが多いのだそう。
動物病院で先生からこの病名を聞いたとき、「大変な病気になってしまった」というのは、感覚的にわかりました。犬に限らず人間でもそうだと思いますが、「血液の病気は恐ろしい」と認識していたからです。
この記事では私の“体験談”として、ももを襲った病「免疫介在性溶血性貧血」について綴ります。少しでも飼い主さんの参考になり、この病気を認知して頂けると幸いです。
犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に見られる症状
- 食欲不振
- 元気がない
- 舌、歯茎、目の下まぶたの裏側にあるピンク色の部分(あっかんべーをしたときに見える部分)が白っぽくなっている
- 血尿が出る
まず、急に食欲が落ちてしまったことを覚えています。手でごはんをあげても食べてくれないし、無理やり口に入れても出してしまう。
食欲がないためか、元気がない様子でした。それから、舌や目の下まぶたの裏側のピンク色の部分がやや薄くなっていることも気になりました。
通常、きれいなピンク色をしている舌が、白っぽくなっていたのです。
まさにこれは、「貧血の症状」だといえます。
また、血尿や下痢などの症状も見られたため、すぐにかかりつけの動物病院にももを連れて行きました。
2013年11月2日のことでした。
免疫介在性溶血性貧血と診断されてから、ももは次第に痩せていきました。
元気なときは6kgほどあった体重が、病になってからは4kg台まで落ちこんでしまったのです。目にも元気がなくなり、とてもつらそうな顔をしていました。
犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の原因は
免疫介在性溶血性貧血は、体内に入ってくるウイルスや細菌などを攻撃する免疫システムが自分の赤血球を攻撃し、破壊してしまう病気。
その要因は、ウイルスや細菌の感染、抗生剤、ワクチンといったものが考えられるのだそう。ただ、確かなことはわかっていないといいます。
犬の免疫不全の症状が悪化して、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に……?

(左手の腫瘍を切除して、なかなか治らない状態のもも。この頃、急激に痩せてきていました)
診断前にみられた兆候
いま思えば、ももが「免疫介在性溶血性貧血」と診断される前から、その病気の兆候はあったのかもしれません。
下記で取り上げることに関連性があるかは不確かですが、私は「もしかしたら、このときからももの体には異変が起こっていたのかもしれない」と思っています。
<脂漏症で毛が抜け始める>
実は、免疫介在性溶血性貧血になってしまう8か月ほど前、突然ももの胸のあたりや足の毛が大量に抜け始めたのです。
また、「脂漏症」というのですが、毛が抜けたところに脂性のかさぶたみたいなものが、カサカサとできるように。
このとき、病院の先生は「免疫不全かもしれない」と仰っていました。脱毛と脂漏症を治すために週に一度バブルシャンプーに通い、ステロイドを飲んで改善を図ることに。
治療の甲斐もあって脱毛と脂漏症はなくなり、「免疫不全の症状も改善してきているかもしれない」と、ようやく希望が持てたのです。
<切除した皮膚腫瘍の傷跡が治らない>
しかし、脂漏症に改善の兆しが見えた頃、ももの前足に「皮膚腫瘍」が見つかりました。これは8歳以上になると好発するといわれています。
幸い、ももの腫瘍は悪性ではなかったのですが、どんどん大きくなってビー玉サイズまでになってしまったため、レーザーで切除することに。
無事に腫瘍は取り除けたのですが、そのあとなかなか傷跡が塞がらない状態が続きました。
通常であれば傷跡が塞がる時期に、ももの傷口からは膿が出てきて、消毒の処置が必要に。何度も通院しましたが、いっこうに症状は改善しなかったのです。
「傷の治りが遅い」というのも、免疫不全によるものだったのではないか、といまでは思っています。
犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の治療法
免疫介在性溶血性貧血の治療として、ももはステロイドを再び飲み始めることになりました。
ですが、症状が進行していたためか、効果は見られず。輸血もしたのですが同様に改善せず、むしろ症状が悪化しているようにも思えました。
このころ、まったくごはんが食べられなくなり、高栄養の缶詰を注射器で与えていました。食べたがらない愛犬に無理やり食べさせるという行為は、飼い主にとっても非常につらいものです。
毎日のように点滴もおこない、少しでも元気になってほしいと願いましたが、約3週間後の11月21日、ももは私の腕の中で息を引き取りました。
病名がわかってから3週間で逝ってしまうなど、思いもよらないことでした。
ももの死を経験した私が、飼い主さんに伝えたいこと

(飼い主と添い寝するももちゃん。まだ元気な頃の写真)
免疫介在性溶血性貧血で愛犬を亡くした私が、世の飼い主さんに伝えたいことは、「できるだけ早くペットの異変を感じとってあげて、病院に連れて行ってほしい」ということ。
免疫介在性溶血性貧血でいえば、「食欲不振」「舌や目の下まぶたの裏側のピンク色の部分が白っぽくなっている」などです。
もしかしたら、血尿になってしまってから連れて行くのでは、遅いといえるのかもしれません。
ももの病気の経験を通して私が思ったことは、「心配し過ぎなぐらいに、ペットの変化・異常には敏感になることが大事」だということ。
動物は喋れないので、「痛い」「つらい」といえません。飼い主が、病気のサインを受け取るしかないのです。
そして、なにか少しでも不安に思うことがあるのなら、すぐに病院へ連れて行くこともお願いしたいです。
病気になって症状が重くなってから先生に見せるのではなく、日頃から定期的に健康診断をしてもらうことも、いち早く病気に気づくことに繋がるでしょう。
もし、その動物病院での診断を不安に思うのならば、セカンドオピニオンをお勧めします。ほかの病院の先生に診てもらうことで、結果的には飼い主の安心にも繋がると思います。
「愛犬の体のことは、心配しすぎでちょうどいい」
いま私は、そう思っています。
参考:『最新版 犬の家庭の医学』(共立製薬編 石田卓夫監修)
※この記事は実体験に基づいて書かれているため、個人の感想・見解が含まれています。
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