
Vol.8 犬に休息場所が必要な理由ー犬と人と-共に生きる
安心できる場所はありますか?
前回の連載で5フリーダムについてお伝えしましたが、今回はその中の一つである「恐怖や不安からの自由」に関わる問題について、例を上げながら紹介したいと思います。
動物の生まれ持った行動(本能行動)はその役割によって分類すると幾つかのカテゴリーに分けられます。
代表的なものは食物を食べる「摂食行動」、不要な老廃物を体外に出す「排泄行動」などがありますが、このような、生きていくために必要な行動のことを「維持行動」といいます。
当然この中には、寝る、休むといった行動も含まれ、これらの行動は「休息行動」といいます。
皆さんのワンちゃんはどこで寝ていますか?
さて、皆さんのワンちゃんが寝ている場所を思い出してみて下さい。
多くのワンちゃんは机の下や家具のそばなど、物陰が好きで、ふわふわした布やクッションのような素材を選んでいるのではないでしょうか?
たとえばソファの上でも、背もたれや肘置きにくっつくように寝ているのはまさにこれに当たります。これは犬という動物が持っている特性で「暗くて狭い場所」と「柔らかい素材」を寝床として選びやすい傾向があるからです。
では、そのような場所はワンちゃん専用になっているでしょうか?
もしそうでない場合は、お飼いのワンちゃんたちは常に寝床が脅かされるかもしれない恐怖と隣り合わせで生活しているかもしれません。
動物は眠らなければ死んでしまいます。つまり、少し極端な言い方をすれば安心して眠れない、休めないような環境は生命の危機を感じることになり、5フリーダムの「恐怖や不安からの自由」が確保できていない状況となるのです。
起こされるのが自分だったら…?
ですから、寝ている姿が可愛いからとジロジロ見たり、さわったりという行為はNGです。
ドッグトレーナーをしていると寝ている時にさわると噛むという相談を受けることが少なからずありますが、人間に当てはめてみて下さい。
熟睡している時に起こされる(さわられる)ほど嫌なことはありませんよね?ましてや犬は人間よりも感覚が優れ、眠りの浅い動物ですから少しくらいなら大丈夫というのは通用しません。
休むスペースが決まっていない犬は、常に寝床がない不安を抱えながらジプシーのように家の中を休める場所を探し続けるか、今自分が寝ている場所を守ろうと攻撃的になりうなったり噛んだりするようになることがあります。
特に、人間の休む場所と犬の休む場所がバッティングしている場合は要注意で、人に犬の寝床を奪うつもりがなくとも、犬がその恐怖や不安を感じれば攻撃に出ることもあります。
人のベッドで寝ている犬をどかそうとしたり、一緒に寝ている時に寝返りをうった時に噛みつかれたなどはまさにこれにあたります。上下関係は一切関係ないのです(そもそも上下関係という考え方自体、現在では否定されています)。
ハウストレーニングをしよう!
人と犬の休息スペースがバッティングしても他に選択肢のある大きな家ならまだいいですが、総じて日本の住宅は狭く、犬には住みづらい部分も多くあります。
ですから、このような問題を解決するには、犬専用の安心できるスペースを設けてあげることが必要です。安心できる場所は視線や音などが入ってきやすいベッドタイプや網目状のケージタイプよりも四方を覆うプラスチック製のクレートタイプのものがおすすめです。
もちろん、暗くて狭い場所が好きな動物だからと言って無理やりハウスに閉じ込めるようなことをすれば嫌いになってしまいますし、悪いことをした時に閉じ込めるような使い方をすれば安心できる場所になるはずがありません。
ハウスの中に犬が好むようなタオルを入れたり、ハウスの中でおやつやゴハン、コングなどの中に食べ物が詰められるおもちゃをあげたりしながらゆっくりと慣らし、入っていられる時間を伸ばしていく必要があります。くれぐれもいきなり扉を締めたりしないようにして下さい。
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