日本人と日本犬の付き合いは、縄文時代までさかのぼります。ずっと共に暮らしてきたはずなのに、現代になって「日本犬は難しい」と言われ、悩みを抱える飼い主さんが増えています。

 

今回は日本犬に詳しい獣医師・トレーナー、山下國廣先生に性格の特徴やしつけについてうかがいました。

 

日本犬とうまく付き合うために。3大特徴を知ろう

日本犬はプリミティブドッグ(原始的な犬)に分類されています。作業犬として人為的に改良されてきたラブラドール・レトリーバーとの違いを比べてみましょう。

 

その1:自立心が強い

日本犬は「家庭で飼える野生動物」のような犬です。

野生では自立しなければ生きていけないので、日本犬も自分で考えて判断する傾向が強めです。

人の近くで作業する目的で改良されたラブラドール・レトリーバーとは異なる点でしょう。

「犬の能力は3歳程度」と言われる場合もありますが、それは言語的な思考回路のこと。判断力や観察力は大人よりも鋭いと思います。

 

日本犬の小犬たち

 

その2:成長の幅が大きい

子犬の頃は親犬や飼い主さんに守ってもらえるので、好奇心旺盛でいろいろなことにチャレンジします。

思春期にあたる生後半年〜1歳頃から自我や警戒心が芽生え、成犬になる2歳頃には大人のような落ち着きを備えます。

子どもが小学5年生頃から中学生にかけて急激に大人びていくように、日本犬は精神的に大きく成長していきます。

野生動物がいつまでも子どものようなことをしていたら、敵に狙われてしまいますからね。

一方、ラブラドール・レトリーバーは成長しても子犬らしさを残します。

 

その3:野生の本能が強い

イヌ科の本能が強いので、においを嗅いだり穴を掘ったりします。オスでは同性に対して攻撃行動が出る場合も。

哺乳類の多くはメスやテリトリーを巡って争うことがあり、攻撃行動は当然ともいえます。

ただし社会で暮らす以上ケンカをさせるわけにはいかないので、危険と思ったらすぐにその場を離れること。

誰とでも仲良くさせようとするとかえってケンカ癖をつけてしまうことがあります。

一方、ラブラドール・レトリーバーは人の近くでの作業や仲間と一緒の作業に向くように、攻撃行動を抑えるブリードをされてきました。

 

 

しつけが難しいと言われるのは誤り

家庭犬のしつけで大切なのは、一緒に楽しく暮らせるようにすることです。それにも関わらず、号令にキビキビと従う警察犬の訓練をベースに考えるから難しいと感じてしまうんです。

 

日本犬のしつけは、飼い主さんと犬の基準を一致させることがポイント。例えば留守中には、イタズラをせずに昼寝をするなどおとなしくしていてほしいですよね。

 

そこで「飼い主の目を盗んでイタズラするより昼寝をしていたほうがいい」と犬が判断するようにお膳立てします。

 

具体的には単純ですが、イタズラができない、昼寝でもするしかない環境にしておくこと。これを繰り返せば「留守中は昼寝をする時間だ」と覚えてくれます。飼い主さんにとって好ましい行動をする犬に育てましょう。

 

また、日本犬は習慣化したことを守ってくれるのがいいところ。成長期から一定の年齢までに経験していないことは、避ける傾向があるからです。これは野生動物と同じ。

 

それまでに経験し、失敗しなかったことだけやれば安全ですが、新たなことに挑戦したら痛い目に遭う可能性もありますからね。

 

日常生活では、明治時代の大人の日本人をイメージして付き合ってみてください。

 

礼節を重んじる一昔前の頑固な人。なおかつ小学5年生くらいの思春期の難しさも持っているかもしれません。しかしいつまでも子どもに対する保護者のような接し方ではなく、一対一の関係を心がけてみましょう。

 

 

山下國廣先生(獣医師/ドッグトレーニングインストラクター)

 山下國廣先生(獣医師/ドッグトレーニングインストラクター)

軽井沢ドッグビヘイビア主宰。

NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ理事。

家庭犬のしつけ指導をはじめ、里守り犬、ベアドッグ、外来生物探索犬の育成を行っています。

甲斐犬のすぐりくん(享年15歳)を日本犬初の災害救助犬に育てました。

 

軽井沢ドッグビヘイビア

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