
匠に聞く・日本犬との向き合い方 ~問題&対処編~
匠に聞く・日本犬との向き合い方 ~特徴&しつけ編~に続き、山下國廣先生のお話です。
飼い主さんから寄せられることが多い問題と対処法、日本犬の魅力をうかがいました。
日本犬に多い5つの問題と対処法
僕が相談を受けることが多い5つの問題には、それぞれに理由と適切な対処法があります。
「飼い主への反抗」や「順位を狙っている」と解釈するのは誤りです。
一つずつ説明していきますので参考にしてください。
その1:うなる
不満や警告の表現なので、悪いことではありません。「嫌だ」と伝えるコミュニケーションの一環と思ってください。
[対処法]
うなるだけであれば、飼い主さんは相手にしないようにするのがいいでしょう。もし他犬に対してうなる場合は、すぐに距離を置きます。
日本犬は犬への社会化を進めていても、成長すれば相性の合わない犬にうなることもあります。ケンカをさせなければ問題ありません。
その2:噛む
本来は敵に向けるはずの攻撃性を飼い主さんに向ける場合は、それまでの育て方が関係しています。
例えば力で抑えつけるようなことをしていれば、力で向かってくるようになります。
[対処法]
最もやってはいけないのが、怖がりながら叱ること。
ビクビクしながら叱っても犬はお見通しで、噛めば自分の主張が通ると学習してしまいます。
また、突然キレたように激しくうなったり強く噛んだりする場合、脳波異常が関係していることも。
どちらにしても飼い主さんが自力で対処するのは難しいので、行動学と学習理論に基づいて指導してくれる専門家に相談しましょう。
その3:守る
ガムや食器などの食に関係するものや、ソファなどの場所を守って攻撃的になる犬もいます。
犬の身になって考えると「自分の大切なものを飼い主が奪おうとしている」という状況なので、守るのも当たり前です。
飼い主さんだって自分のお気に入りを横取りされたらいやですよね。
[対処法]
一番簡単な解決方法は、犬が守るものを置かないことです。
その4:無視する
飼い主さんの言うことを聞かない理由はいくつか考えられます。
自分の都合で犬にとって不利益なことばかり指示していませんか?
または犬が指示を無視しても「まぁいいか」とそのままにしていませんか?
言うことを聞くと損で、しかも従わなくても済むなら無視しますよね。
日本犬は指示されても「どうしようかなぁ」と動くまでに少し間があります。自分で判断している最中なので、立て続けに指示を出さず待ってあげたほうがいいです。
飼い主さんだって何かしているときに「こっちを手伝って」と頼まれたら、ちょっと待ってほしいと思うでしょう。
こちらを済ませてから行こうかと思ったときに「早くして!」と急かされたら嫌になりませんか?
[対処法]
犬ができるはずの指示を出したら必ずやらせること。
立て続けに口うるさく言うのではなく、考える時間を与えながら「無視はダメ」と念を押すために、数秒経ってから再度指示を出します。
渋々でも言うことを聞いたら必ずほめて、ときにはごほうび(食べ物など)も与えてください。
人の都合だけで犬が損するような指示ばかり出さないこと、出した指示は必ず実行させることが鉄則です。
その5:飽きる
フセとオスワリの繰り返しや際限のない「持って来い」など、同じ場所で同じことを繰り返させていると飽きてきます。
ごほうびを与えていればしばらくは楽しそうですが、だんだんやる気がなくなっていきます。飼い主さんは大げさにほめて盛り上げようとしがちですが、日本犬の場合はしらけて引いていってしまいます。
[対処法]
日本犬は目的がわからないことを長時間やりたがりません。犬に目的を理解させて、それに向かって喜んで動いてくれるように教えるのがコツ。
「宝探しゲーム」のように、「発見したら終わり」というゴールが明確なことなら集中します。
そして、飽きる前にやめるのもコツ。ごほうびをオヤツではなく犬が好む行動にしてもいいでしょう。
自立していて、あうんの仲になれることが魅力
僕は子どもの頃から犬がいる生活を送っていました。最初に飼っていた柴犬のことはよく覚えていなくて、小学2年生の頃に来た秋田系ミックス犬から記憶がスタートしています。
大学卒業後、千葉県で一人暮らしをはじめて犬を飼いたくなり、後輩に教えてもらった柳沢琢郎さんの甲斐犬専門犬舎から「ナギ」を迎えましたが、残念なことに若くして亡くなってしまいました。
結婚して長野県に引っ越してから妻が犬を飼いたがり、再び柳沢琢郎さんから譲っていただいたのが「すぐり」です。
日本犬の魅力は、自立していて気持ちが通じること。あうんの仲ですね。日本犬と暮らすと、ただ指示に従うだけの犬、困ったことをしないだけの犬では物足りなくなります。
飼い主さんも悩んでばかりではもったいないので、ぜひ日本犬との暮らしを楽しんでくださいね。
山下國廣先生(獣医師/ドッグトレーニングインストラクター)
軽井沢ドッグビヘイビア主宰。
NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ理事。
家庭犬のしつけ指導をはじめ、里守り犬、ベアドッグ、外来生物探索犬の育成を行っています。
甲斐犬のすぐりくん(享年15歳)を日本犬初の災害救助犬に育てました。
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