
イラストレーター 影山直美さん × ライター 金子志織 対談 その2:日本犬を迎えた理由、しつけの苦労、共に暮らす楽しみ
「その1:日本犬の魅力は自立心、多彩なあだ名、そして後頭部!?」
◆ しつけではなく付き合い方で解決することもある
日本犬飼い主さん同士のすれ違い流儀
金子:甲斐犬は飼い主に忠実と聞いていましたが、実際はオヤツに釣られやすいタイプでした(笑)。ジュウザはオヤツを持っている人にとってもフレンドリーなんです。
影山:飼い主が「大丈夫だよ」って言ってから食べる犬に憧れますよね。でも食いしん坊ならしつけがうまくいきやすかったんじゃないですか。
金子:オスワリとかはごほうびで教えられたんです。でも去勢手術をしていないオスとケンカの売り買いをすることがあって、これは先回りして止めるのが大変でした。
影山:それは生き物としてしょうがないっていうか。ゴンも犬に対しては厳しくて、自分からしっぽを振ってあいさつしに行ったくせに一喝していたんですよ。日本犬同士の場合、飼い主さんと「お互いさまですよね」みたいな感じで道の端をすれ違ったり。
テツは子犬の頃から犬に慣れていなくて、こまはフレンドリーですね。ジュウザくんは見た目がキリッとしているから、相手によっては緊張しそう。
金子:怖そうだけどフレンドリーっていうギャップがよかったみたいです。いかつい人があいさつをしただけですごくいい人に見られるのと同じですね(笑)。
金子:テツくんのしつけの苦労をエッセイで読みましたが、食器を守ってしまうのが大変だったようですね。
影山:テツはオヤツよりも空っぽの器が大切でした(笑)。でも手にのせてあげればいいんだって思いついてから楽になりましたよ。でもごはんがうれしくて興奮して私の手を噛んじゃうようになったから、おべんとう箱みたいなケースに変えて。
その後、動物カウンセラーの先生に「おうちで食べなくたっていいじゃない」って言われて、散歩の途中にあげるようにしました。今は畳んだバスタオルの上にごはんをのせて出しているんですよ。私にとっては食器みたいなものですが、テツは器の形じゃないせいか守ることがないんですよね。
金子:無理に直さなくても対処できれば十分なのかなって思います。ジュウザは私のベッドの下がお気に入りで、そこに入っているときに手を入れたら噛まれたことがあったんですよ。場所を守っていたのかもしれないけど、指示すれば出てくるので特に直しませんでしたね。
安全地帯に入ってきたものにびっくりしただけで、手と思っていなかったかもしれないから、私がやらなければいいだけかなと思いました。
影山:こうしなきゃいけないって思い込んでいると、かえってこじれちゃう気がしますね。犬に忠誠心があるかどうかを試すために、ごはんに手を入れてかき混ぜる人もいますけど、やめたほうがいいと思います。安心して食べられる時間を与えてあげないと。
金子:うなったり噛んだりすることが全部反抗だと思われがちですよね。前に柴犬の遺伝子の記事を書いたことがあるんですけど、とっさに攻撃的に見える行動をとる遺伝子を持っている犬もいるそうですよ。
影山:それ、読みました。テツはなんでこのタイミングで噛むんだろうって不思議だったんですけど、この記事ですべて解決できたなと思ったんですよ。もっと研究を進めてください!と言いたい(笑)。
金子:人間だって肩に手をポンと置かれたとき、状況によっては落ち着いて振り向くこともあれば、びっくりして手を振り払うこともあると思うんですよね。犬にも似たようなことがあるのかもしれませんね。
◆ カウンセリングも頼める獣医師さんは我が家の救世主
影山:うちは行動カウンセリングもやっている獣医師の先生がいなかったらやっていけません。薬の処方だけじゃなくて、テリントンTタッチやバッチフラワーレメディでストレスの緩和もしてくれます。しつけ方から病気のことまで、何もかもお任せですよ。
金子:日本犬の飼い主さんは、そういう先生のところに通うのもありですね。ジュウザは私が寝るとパニックを起こすようになった時期があったんです。安全地帯のベッドの下に入ったら落ち着けるようになって解決しましたが、行動の問題について相談できる先生がいたら心強いと思いました。
影山:精神的なことが原因になる場合もあると思うんですよ。「行動カウンセリングを受けに」となるとハードルが高いですが、動物病院なら、爪切りとかフィラリア予防で気軽に行けますよね。
◆ 喜ぶものがオヤツやオモチャとは限らない
影山:テツは「愛がほしいんです」みたいな感じで寄りかかってくることがあるんです(笑)。そういうときは、なでても大丈夫。気持ちがいいときはクマの笹鳴きや猫ののど鳴らしみたいに、ゴロゴロ、グルグル、ンンンみたいな声を出してます。
金子:ジュウザは鼻息でした。プープー、スースーってかすかな音がします。犬によって違うんですね。
影山:鼻息はかわいいですね。テツの声は最初うなっているのかと思い、ドキッとして離れちゃったんです。でもそうじゃないっていうのがわかってきて、「ごめん、間違えちゃった」と思いました。
金子:飼い主さんの観察力がけっこう重要かもしれませんね。私もジュウザが子犬の頃は何をしたら喜ぶのかわからなくて困りました。とにかく破壊するのが好きだったから、100円ショップのわら製の鳥の巣とか、伐採した太い枝を部屋に転がしてかじらせていたんですよ(笑)。喜んで破壊しているジュウザを私が眺めているだけという、よくわからないことになっていました。当時は別業種だったせいもあって、知らないことだらけ。
影山:言葉がわかっていそうな気がするので、オヤツやオモチャを与えるだけじゃなくて声をかけるのもいいと思いますよ。よくほめるっていうことですかね。私はテツがチーズで包んだ薬を食べたら「こんなに食べるの上手な子、ほかにいないよ」と絶賛します。
テツは何かできたら「プロ!」とほめてもこまには言わないので、テツもわかっていると思うんですよね。お水を飲んだら「すばらしい!」、エリザベスカラーをつけたら「すごく似合う。世界一!」とか。バカじゃないって言われるくらいほめています(笑)。
金子:大絶賛じゃないですか。話しかけていると言葉を覚えますよね。
影山:散歩に行きたそうに見ているときは、「このラフを仕上げなきゃいけないからさ」とか話しかけたり。そうすると、「今は散歩じゃないんだな」ってわかって布団のところに戻るんです。
金子:わかってるんじゃないかなぁって思いますね。ジュウザは優しい声で言うとなんでもほめられていると思っていたので、「わき毛がすごいね〜!」「ジュウザのくせに鼻毛がないんだ」とか言っていました。あえて日常でおおっぴらに言えない単語で絶賛です。
影山:それで喜んでいたならいいですよね(笑)。犬の愛情表現に気づくのも大事だと思うんですよ。テツは散歩中に私のひざのあたりを鼻でチョンチョンってつつくんです。そういう細かい動作が年とともに増えていくと思いますね。
「その3:それぞれの旅立ち。そして再会。」へつづく
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