
大人気のスコティッシュフォールドって、実は病気になりやすいの?
イギリス、スコットランドの農家に買われていた猫から耳の折れ曲がった子猫「スージー」が生まれました。その後、ブリティッシュショートヘアと交配され、現在の猫種となりました。
可愛らしい見た目はもちろん、性格は大人しく、寒さにも強い、抜け毛は少なめ、という飼いやすさもあって日本のみならず世界中で人気となっています。また、スコティッシュフォールドの代名詞といえる「スコ座り」も人気の秘密。まるで人間のような座り方は多くの人を魅了します。
垂れ耳になる確率
スコティッシュフォールドの生まれた子猫すべてが垂れ耳になるわけではなく、立ち耳の子も生まれます。耳が垂れる確率は30%ほどと言われており、その希少性から少しでも耳の折れた子が多く生まれるようにと、一部のブリーダーによって垂れ耳同士の交配が積極的に行われました。結果、遺伝子異常による関節系や内臓系の病気になりやすい個体が増加したと言われています。
スコティッシュフォールドの垂れ耳は、実は軟骨から骨への形成に関わる遺伝子の異常で生じたもの。そのため、垂れ耳同士の交配は「軟骨形成異常」という病気を高確率で発症します。
このような背景からスコティッシュフォールドは母国イギリスでは品種として公式に認められていなかった時代もあります。
現在では、ブリティッシュショートヘアやアメリカンショートヘアとの異種交配が普及し、病気を発症する子は少なくなっていますが、ゼロになったわけではありません。
また、スコティッシュフォールドは先天的に心臓や腎臓などの内臓に疾患を持って生まれるケースが多いこともわかっています。
軟骨形成異常ってどんな病気?
【症状】
軟骨形成異常は成長の初期段階から症状があらわれます。関節周囲の骨が異常に増えて足根関節が腫れてきます。関節を動かすと、痛みが生じるため病気を発症したスコティッシュフォールドは活発な動きをしなくなります。
猫の一般的な座り方である「香箱座り」は痛むため、痛みを感じにくい「スコ座り」をするという説もあります。重度の場合、歩き方が明らかにおかしかったり、ジャンプができなくなったりします。
【治療】
軟骨形成異常を根本から治す方法はありません。外骨症による関節の腫れは元に戻せないため、痛みを抑える治療がメインになります。痛みを抑えることができない場合は手術で骨を削る、関節を固定するなどの治療が行われます。
スコティッシュフォールド、特に垂れ耳を飼うことになったら、普段から動きや尻尾に異常がないかをよく観察し、もし気になる場合は獣医を受診しましょう。
スコティッシュフォールドがかかりやすい病気とは?
軟骨形成異常以外にスコティッシュフォールドがかかりやすい病気を紹介します。
肥大型心筋症
心臓の筋肉が肥大して、動脈に送る心臓の内腔が狭くなってしまう心臓病です。血液循環が悪くなり血栓塞栓症が起こったり、下半身に血液が循環しなくなったり、最悪の場合、突然死を起こすこともあります。原因は心筋を構成する遺伝子の異常と報告されています。
【症状】
軽度から中程度ではほとんど症状が見られません。重症になると呼吸不全、咳などの症状が現れます。心臓から動脈への血液が流れにくくなり、肺に水が溜まります。口を開けて呼吸をしたり、お座りの姿勢より前足を左右に広げて呼吸をしていたら注意が必要です。
また、ピンク色の液体を咳とともに吐き出したり、眠いのに体を横にすることができない状態になったりします。血栓塞栓症を合併すると、急に大きな鳴き声をあげたり、後ろ足を引きずりながら、部屋中を走り回ることがあります。
【治療】
急性期…利尿剤、血管拡張薬を用います。落ち着かない場合は鎮静剤を投与することもあります。
慢性期…利尿剤やβ遮断薬で治療を行います。重症の場合は血管拡張薬によってふらつきや食欲不振に陥ることもあります。
血栓塞栓症を合併した場合…抗血栓療法や血栓溶解剤を投与します。また、手術によって血栓を取り除く場合もあります。
外耳炎
外耳道の周りに炎症が起こる病気で、猫の外耳の病気で最も多くみられます。外耳に耳垢がたまり、湿った耳垢に細菌が繁殖することが原因として多く見られます。
放っておくと慢性的な炎症を繰り返し、治りが遅くなったり、内耳にまで炎症が広がってしまうケースもあるため、早めの対策が重要です。
垂れ耳のスコティッシュフォールドは発症確率が高い
垂れ耳のスコティッシュフォールドは耳が塞がっているため、他の猫よりも蒸れやすく細菌が繁殖しやすい環境が揃っています。垂れ耳でロングヘアの場合はさらに注意が必要です。
耳垢が蒸れる原因の第一がシャンプーです。シャンプーをする際に耳に水が入った場合は綿棒やガーゼで優しく拭いてあげるようにしましょう。
【症状】
外耳炎は病型や原因によって症状が異なりますが、主に次の症状が見られます。
外耳道が赤く充血する
痒みがある
耳垢が異常に多くなる
悪臭のある粘液性の汚れた滲出液や膿汁
外耳炎になった猫は頭を振ったり、耳を柱にこすりつけたり、後足で耳の付け根を引っかいたりします。
【治療】
耳道の洗浄と清拭によって治療を行います。耳垢から細菌や心筋の感染が確認された場合は抗生物質や抗真菌剤の軟膏などを用います。耳ダニによる外耳炎の場合は殺虫剤を塗布します。
予防としては普段から耳を清潔に保つようにすることです。普段の状態をしっかりと確認しておけば、異常にもすぐに気づけます。ただし、耳掃除をする際は目に見える範囲のみを掃除し、外耳道を傷つけないようにしましょう。
下部尿路症候群
尿の中に結晶(尿結石)ができ、尿道に詰まったり、膀胱を傷つけたりする病気です。尿道が細く、長いオス猫が重症化しやすいと言われています。
結石によって尿道が詰まると尿毒症を発症し、命を落とす危険があるため早急に対処する必要があります。ミネラル分の多いドライフードなどを食べさせると発症しやすくなります。
【症状】
尿が出にくくなります。そのため、トイレに行っても尿がほんの少ししか出ないか、または全く出ないため、頻繁にトイレに行くようになります。尿毒症を発症すると食欲がなくなり、嘔吐を繰り返し、体温も下がります。また、膀胱が傷つき、血尿が出ることもあります。
【治療】
排尿に異常が出てからの時間によって治療法は異なります。尿が出なくなってから時間が経っていない場合は、尿道に詰まった結石を取り除けば大丈夫なのですが、2〜3日経っている場合は、尿毒症を発症しているため、入院が必要になるケースも…。
(まとめ)
いかがでしたか?確かに病気は心配ですが、それはスコティッシュフォールドに限ったことではありません。遺伝的な病気は避けられませんが、外耳炎のような病気は予防も可能です。
飼いたいと思った猫を飼い、最後まで目一杯かわいがってあげれば、人も猫も幸せなのではないでしょうか?
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