日本の最も東にある「釧路市動物園」は、1975(昭和50)年に開園。今でこそ「よこはま動物園 ズーラシア」や「東京都多摩動物公園」に抜かれたものの、総敷地面積47.8haは当時では最大級。釧路湿原などの大自然に囲まれ、日々感動的なドラマが繰り広げられています。

釧路市動物園ヒストリー

釧路市動物園
釧路市動物園は、昭和50 年(1975 年)10 月1 日にオープンしました。

 

北方圏のみならず、市民の要望を取り入れて熱帯産の動物の飼育展示を行なうほか、遊園地機能を備えた道東地域のレクリエーション施設として位置づけられ、1978(昭和54 )年には入園者数261,099 人を達成しました。

 

釧路市動物園の基本理念は、「いのちとふれあい、いのちをつぐむ」。動物たちとの触れあいを大切にする一方で、野生動物や自然環境の保護などにも力を入れています。
 

主な動物・見どころ

動物園のコンセプトは、

  • いのちを伝える
  • 感動と発見のある動物園
  • 誰もが楽しめる動物園

の3つです。
そこには「楽しかった、また来ようね」と言わしめるだけの魅力が溢れています。
 

いのちを伝える

 

アイヌの守り神「シマフクロウ」

名前の由来である「シマ」とは「縞」ではなく「島」。つまり北海道のことを指します。生息地は知床半島・釧路湿原・根室地方のみ。

シマフクロウ

かつてはアイヌ民族の神に送る儀式「イヨマンテ」にも用いられていましたが、環境破壊により数が激減。環境庁の調査によると、自然界では120~160羽程度。ジャイアントパンダも真っ青になるほどの絶滅危惧種なのです。ちなみに、Jリーグのコンサドーレ札幌のマスコット「ドーレくん」のモチーフでもあります。
 
釧路市動物園 シマフクロウ

 
生息地に近い釧路市動物園ではシマフクロウを集中させ、繁殖させる試みが行われています。1994年に初めてふ化に成功し、これまで17回、計21卵がふ化し、うち8羽が生存しています。
 
2017年6月19日には、7年ぶりとなる赤ちゃんが生まれました。人間の手で生息環境を破壊する一方で、人間の作った環境により新たな命が生まれる。動物園の使命は、人間の葛藤でもあることを教えられます。
 

仮死状態で生まれ感動を与えたアムールトラ「タイガとココア」

 

釧路市動物園 トラ

2008年5月24日、釧路市動物園で初めて生まれた3頭のアムールトラは仮死状態でした。まもなくして一番小さかったオスが天国に召され、一緒に生まれたオスとメスが命を拾いました。ここから感動の物語が始まります。二頭のトラは、タイガ(オス)、ココア(メス)と名付けられました。障害が残り歩くのが難しい状態だったものの、すくすくと育っていきます。
 

釧路市動物園 トラ

「二頭の成長に役立ててほしい」と、エサを提供してくれる団体や寄付が集まるなど、懸命に生きる姿に人々が応援をおくるようになります。新獣舎も完成し、釧路市動物園のアイドルとして、いつまでも二頭仲良く生きていてほしい。誰もがそう願っていましたが…
 
2009年8月25日、閉園後の午後4時50分ごろ、突然の大声に飼育員が寝室に駆け付けると、タイガがもがき苦しんでいました。エサの肉をのどに詰まらせていることが分かったため獣医と共に救急措置を施しましたが、間に合わず天に召されてしまいました。
 
釧路市動物園 トラ

もう一頭のココアは元気に成長し、いまや立派な大人です。以前のように人が群がることもなく、静かに毎日を過ごしています。タイガのことだって忘れ去られたわけではありません。
 
短い生涯でしたが、今も動物園の中に魂は生き続けています。成長を記録したアルバム、全国から寄せられたメッセージ、一つ一つがタイガの生きて来た証なのです。
 

感動と発見のある動物園

 

キリンとシマウマのラブラブカップル

初めて見たときは「なんじゃこりゃ?」と思いました。アミメキリンのスカイくん(5歳)は、コハネという彼女がいるのに、お隣のグラントシマウマの小夏姉さん(10歳)にベタぼれ。
 

釧路市動物園 キリンとシマウマ

 
同じ偶蹄目といえども、このいちゃつきぶりは見ている者を赤面させます。動物園ではキリンの繁殖を期待しているそうですが、シマウマが「オカピ」に似た子供を産むのではと心配になります。
 

動物園内に湿原を取り入れた「北海道ゾーン」

北海道東部の自然環境とそこに住む動物たちをコンパクトにまとめています。湿原に遊歩道が整備され、タンチョウなどの動物園で飼育されている生き物だけでなく、自然の野鳥や昆虫に出会うこともできます。

釧路動物園 北海道ゾーン
 
 

あえて舗装しないという選択

なんと動物園の中に山道が存在します。沿道には四季折々の花が咲き、今ではほとんど見ることができないクロユリも姿を見せてくれます。冬季間は除雪ができないため通行止めになるワイルドさ。オシャレなサンダルやピンヒールでは厳しいかも知れません。

釧路市動物園
 
 

誰もが楽しめる動物園

 

いつでもモグモグタイムを楽しめる

ペットを飼っている人ならわかると思いますが、動物がエサを食べる姿は可愛いですよね。ここではウサギ、ニホンザル、そしてヒグマにだってエサを与えることができます。

釧路市動物園 熊

自分だけの「モグモグタイム」。楽しくないわけがありません!
 

動物だけじゃない!こんなところも〇

園内には広々とした芝生やバーベキューコーナーがあり、ピクニック気分で訪れる家族やカップルをたくさん見かけました。飲食コーナーが少ないので、お弁当を持って出かけた方が楽しいですよ。また、遊園地としても楽しめます。どれもひと昔前の遊具ですが、子どもは優しさ、大人は懐かしさを感じることでしょう。

釧路市動物園 観覧車

 

楽しさの中に込められたメッセージが伝わる

 

釧路市動物園 シロクマ

動物園を見ていると、あちこちから「楽しい」という言葉が聞こえてきました。現在主流の動態展示も少なく設備も古いですが、動物の見せ方や説明方法に工夫が凝らされ、それを補う魅力に溢れています。
 
パンフレットに「神(カムイ)に会える かけがえのない大自然~守られているのは私たち」と書かれているとおり、人間も「自然の中に生きている」のではなく、「自然に生かされている」のだと実感。動物たちを通じて、環境への配慮がいかに大切かというメッセージが伝わりました。

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