
それでも繰り返される・・多頭飼育崩壊について考える
こんにちは。Hirokoです。
ペットブームと言われる近年、家族の一員として大切に飼われているペットがいる一方で、未だに多くのペットが殺処分されているのが現実です。
そして、最近テレビ番組で特集が組まれるほどの社会問題となってきている「多頭飼育崩壊」。
この単語を一度は耳にしたことがあるでしょう。
今回はこの問題について取り上げてみました。
多頭飼育崩壊とは何なのか?
多頭飼育崩壊とはそもそもどういう状態をいうのか?
多頭飼育崩壊とは、不妊手術を受けさせていないペット間で繁殖が繰り返されて飼い主の予想を超えた頭数になり、飼育不可能になる現象のことです。
無知なまま動物を飼い始めた結果、増えてしまった。という場合と、『アニマルホーダー』と言われる飼い主の精神病が原因の場合もあります。
アニマルホーダーとは、管理可能な頭数を超えて動物を飼育し、それにより適正な飼育ができなくなっているにもかかわらずその自覚がない。悪臭や騒音で近隣を困らせているという意識も乏しい状態です。
なぜ多頭飼育崩壊が起こってしまうのか?
原因その1 猫の繁殖力
猫は1年に二回繁殖期を迎えます。そして、交尾をしたらほぼ確実に妊娠すると言われています。
1回の出産で2~5匹ほどを出産しますので、もし1年に二回出産をしたとしたら、1年で4~10匹の子猫が生まれるということになります。猫は生後半年から妊娠が可能となります。その猫たちが妊娠出産を繰り返すことで予想もしない数の猫が増えていくのです。
この猫の強力な繁殖力について、飼い主が認識しておらず、危機感を持った時にはすでに手遅れとなってしまうケースが多く見られます。
原因その2 避妊手術をしない
飼い主の中には、避妊手術というものを知らない、または「手術なんてかわいそうだ」という理由で猫に避妊手術を受けさせないケースもあります。
手術はオス猫の場合はだいたい1万円~1万5千円、メス猫の場合は2万~2万5千円ほどが平均費用です。住んでいる市町村によっては、猫の避妊手術に助成金が出るところもあります。
(日本動物医師会 参考資料 )
手術の流れは、前日の夜から食事を抜いて病院へ連れて行きます。オスの場合は手術当日に、メスの場合は1泊して翌日に退院という流れの病院が多いようです。
多頭飼育崩壊を起こした家は、猫が増えてしまい、慌てて避妊手術を受けさせようとしたが、費用がかさむため経済的に受けさせられない。助けてほしいとSOSを出すケースがほとんどです。
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実際に起こってしまった多頭飼育崩壊事例
最近、テレビ番組で取り上げられていた現場は、家族4人暮らしで猫が46匹いました。
最初はメスの子猫を飼い始めたが避妊手術を受けさせないまま、その翌年に知り合いからオス猫を譲りうけ、その後の6年間で46匹に増えたのです。
その家では、猫をリビングに閉じ込めるようにして生活していました。人間はキッチンが使えず(猫に占領されているため)料理はまったくせず、食事は惣菜で済ませているとのこと。
猫が増えてしまったため、餌代やトイレの砂に月5~6万円かかり、猫が怪我をしても病院へ連れて行くお金がないためそのままにしていました。
多くの飼育崩壊現場では飼い主が猫の健康状態を把握できていなかったため、病気になっている猫がいたり、ひどい場合は床下から亡くなった猫が見つかるケースもありました。閉じ込められた空間で近親交配を繰り返すために、先天的に体に障害を抱えた猫も生まれやすいのです。
先述した現場では、「猫同士が殺し合いをした」という事件が起こったのがきっかけでボランティア団体に助けを求めたそうです。
猫は本来、縄張りを強く意識して生きている動物です。それが狭い空間で46匹も所狭しと暮らしていてはストレスも相当なものだったと思います。
動物愛護法に、
『動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。また、みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと、動物による感染症について正しい知識を持ち感染症の予防のために必要な注意を払うこと』
との記載があります。
上記の家の飼育方法は明らかに動物愛護法に違反しています。
多頭飼育崩壊現場では、近所から異臭や鳴き声の苦情も多いと聞きます。
そのため、根本的なところを改善しないまま、部屋を閉め切りますます猫の健康状態に悪影響を及ぼしていることもあるのです。
崩壊現場にいた猫たちにはどんな将来が待っているのか
崩壊現場にボランティア団体が介入し、保護された猫は運がよければ新しい里親さんに引き取られることになります。
しかし、全部の猫が幸せになるとは限りません。
ボランティア団体のもとで健康を取り戻すまで治療に時間がかかる子もいますし、健康を害したまま亡くなってしまう子もいます。
健康を取り戻しても新しい家族が見つからずにいる猫もいるのが現実です。
あるケースでは、一人暮らしのご老人が入院してしまい、残された猫たちの排せつ物の匂いでご近所の方が気付いて多くの猫が保護されたということもあります。
もし、気付いてもらっていなかったら、そう考えるととても怖いです。
中には多頭飼育崩壊を誰にも相談することなく、飼いきれないとの理由で飼い主がセンターへ持ち込むケースもあります。
その子達は新しい家族が見つからなければ殺処分となってしまいます。
また、多頭飼育崩壊現場からレスキューした猫たちを保護した現場で保護する頭数の許容範囲を超えてしまい、飼育不可能になる二次崩壊と呼ばれるケースも報告されています。
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多頭飼育崩壊現場の猫たちを救う活動
テレビ番組では、ボランティア団体が介入されていました。
多くの団体は、崩壊現場の猫たちを保護して避妊手術を受けさせてワクチンの接種をして里親を探します。
病気や怪我をしている猫には適切な治療を受けさせます。
これには莫大なお金が必要です。寄付金や餌などの物資の寄付を募りながら活動されています。
また、保護猫に理解がある動物病院との連携で活動が成り立っているのです。
ボランティア団体の方々のブログやテレビ取材を見ていると共通しておっしゃっているのは、「猫に責任はない。猫に幸せになってほしいからやっている」という信念です。
そして、多頭飼育崩壊を起こした家の人に密に連絡をとって、近況を報告してもらうようにしているそうです。そのあとの生活の立て直しやまた猫を増やしていないか、そこまでケアされているそうです。
ただ猫が好きなだけでは対応できない過酷な現場もあります。
まとめ
これだけテレビやニュースで取り上げられている多頭飼育崩壊はなぜなくならないのでしょうか。
ひとつは「無責任に動物を飼う飼い主がいる」こと。
愛情があって迎えるのでしたら自分が一緒に暮らす動物のことを知りたいと思います。
迎える前に勉強したりして知識を得ようとするはずです。その際に避妊手術のことも知ると思います。
増えてしまったけど、手放せない。
手術はお金がかかるので受けさせられない。
病気や怪我をしても病院に連れて行くお金がない。
これは愛情があって猫を飼っているとは思えません。
もう一つは最近問題になっている、飼い主の精神的な病気『アニマルボーダー』です。
アニマルホーダーの人は、適正な飼育頭数を超えてしまい、劣悪な環境で動物を飼っているのに自覚がないのです。
先述した46匹の猫を飼っていた家では、17歳の娘さんに「猫がいなくなってどう思いますか?もし、またお母さんが猫を飼うと言い出したらどうしますか?」と質問されていました。
娘さんは
「猫がいなくなってほっとしています。もし、またお母さんが猫を飼うと言ったら止めます!」
と言っていました。
家族も猫が増えるのを止められなかった。これも問題ではありますが、動物を飼うことはモノを集めることとは違います。
アニマルホーダーは、また同じことを繰り返す傾向にあると言われています。そのため、ボランティア団体の方が訪問したり電話をしてケアをする必要があるのです。
法律の改定や精神病の治療への理解など、解決するのは時間がかかる問題だと思います。
ただ、一人一人が動物を飼う前に、知識を得て生き物と一緒に暮らすのだという認識を持っていったら少しは多頭飼育崩壊の現場が減るのではないかと思うのです。
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