雨の日が多くなりました、梅雨ですね。そろそろ皮膚病で来院する子が増えてくる季節です。

 

皮膚疾患を診察する上で絶対に除外しておきたいのが、ノミ・マダニなどの外部寄生虫です。“予防をしているのか、していないのか”で考えられる病気の範囲が広がります。

 

ノミは都内でもよく寄生している子を診察しますが、マダニは動物と一緒にキャンプや避暑地に行って帰ってきた方に多いように思います。(もちろん近所の草むらでもつきますが・・・。)

 

最近では、フィラリアの予防薬と一緒になったオールインワンの製剤や3ヶ月効果が持続する製剤などその子に合わせた薬を選べるようになりました。日頃から予防しておくことをお勧めします。

 

栄養状態に影響する要因は大きく分けると以下の3要因になります。

  1. 動物側の要因
  2. :年齢、身体状況、疾患の有無等

  3. 食餌の要因
  4. :栄養バランス等の食べ物自体の問題

  5. 環境要因
  6. :食餌の頻度、住んでいる環境、飼育状態(多頭飼育、運動量)等

 

前回からのコラムでは痩せている?太っている?編の栄養状態に影響する要因の中で食餌の要因を考えてみました。

みなさんカロリー計算はできましたでしょうか?

摂取カロリーは妥当な状態でしたでしょうか?

今回はその続きで食餌の要因を考えてみたいと思います。

 

【食餌の要因2】

a.シニア用にしたら太ったのはなぜ?

“〇歳になったからシニア用フードに変えたら、太った”という飼い主さんをよく聞きます。以前のコラムにも書きましたが、適正体重だった動物が高齢になると(12歳以上)、除脂肪体重の減少から逆に適正体重を下回る傾向も認められるようになるので、この状態を防ぐ為に摂取カロリーを増やしてある製品があります。

 

また摂取カロリーが同じでもタンパク質、脂肪、炭水化物の配分が変更されていますので、食べさせてみて排便の状態や体重の増減を気にして下さい(2−4週間で見直し必要)

 

b.“病気によって痩せてきたけどフードを変えた方がいいの?”

“病気によってフードが変わるのはなぜ?”

 

病気になると食餌を変更することが多くなります。これは疾患によって制限しなければならない栄養素やミネラルがあり、またカロリーも増やさなければならない場合もあります。食餌変更によって体重の減少を防いだり、少しでも病気をコントロールし易くすることを目的に用いられます。一般的な内容を挙げてみましょう。

 

1.心疾患用

  • ナトリウム制限されている
  • カロリー増量されている
  • 機能的栄養素(カルニチン、タウリンなど)が増量されている

 

2.腎疾患用

  • タンパク質制限されている
  • リンが制限されている
  • カロリー増量されている

 

3.肝臓疾患用状況で変化する為要注意

  • タンパク質、脂肪が制限されているタイプ
  • タンパク質制限され、脂肪が増量されているタイプ
  • 亜鉛が増量されている

 

4.皮膚疾患用

  • 食餌アレルギーになりやすい原材料は使われていない
  • アレルギーを起こしにくいように加工されている
  • 脂肪酸を増量してある
  • カロリー高め

 

5.尿石(膀胱結石・尿道結石など)用

  • マグネシウムが制限されている
  • 飲水を促すような組成になっている
  • 尿の性状(pHなど)を調整するようにしている

 

6.減量用

  • カロリー制限されている
  • 食物繊維が増量されている

病気の状態と合わない食餌内容は病気のコントロールが難しくなることがありますので注意が必要です。

 

“うちの子は心臓病も腎臓病もあると言われている”

“太っているけど尿石症だから減量用のフードにできない”

 

こんな場合もあります。単一の疾患ではない場合どうしたらいいかわからなくなりやすいです。

 

しかし、心疾患<腎疾患の場合は腎疾患用のフードで対応できますし、尿石症と減量対策を1つのフードでこなす製品も出てきています。かかりつけの先生と相談してみましょう。

 

C.診察時の会話から…!?

“お友達から処方食もらったけど食べさせていいの?

“お友達から処方食もらったので食べさせてます。”キッパリ!

“処方食だから体にいいでしょ?”

 

診察時にありがちな会話です。先ほどの処方食のお話を読んでいただいた方は解っていただけるかと思いますが、食餌内容を病気に合わせているということは、健康な状態には合わないことがあるということです。

 

(例)

猫ちゃんを複数飼っておられる家で、1匹が腎臓病、他の子は健康であった場合で(特に置き餌している場合)、他の子が腎臓病食を食べていると肥満になります。(私の家の猫がまさにそうでした!)

 

(例)

肝臓の数値が高いと検診で言われたので、肝臓病食をネットで買って食べさせているという犬の飼い主さん。再検査してみるともっと数値上昇していました。

 

先ほど肝臓病食は要注意と書いたのはこの話に繋がりがあります。
肝臓病は病気の種類や進行度によって食餌内容を変更しなければならない代表的な病気なのです。

 

その子の状態に合わない中身ですとこのようなことが起こります。かかりつけ医と相談して現在の状況に合わせた内容にして下さい。

 

(例)

“病院で買った処方食と同じ名前の処方食がホームセンターで安かったから買いました。”

 

ありがちな話です。ここにも間違える危険が潜んでいます。それは処方食の名前は同じで中身の機能が違うものがあるからです。

 

“こしあんのおまんじゅう買ったつもりが、粒あんだった”

“クリームパン買ったつもりが、アンパンだった”

と同じ話になります。

 

商品の機能については処方食の名前より小さく表示されていますので注意して下さい。

 

阪口先生 食餌成分編

 

今回は、食餌の内容についてお話しました。カロリーだけを気にしてしまいがちですが、フードの栄養素のバランス(タンパク質、脂質、炭水化物)も見直さないとなりません。特に病気を患っている場合にはさらなる注意が必要です。

 

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