
犬が怖かった16歳の少女 強い意志で傷ついた犬を救う
大抵の人に苦手なものや怖いものがあるのではないでしょうか。
16歳の少女アニーさんが怖いものは犬でした。
しかし、助けが必要な犬の姿を見て勇気を振り絞り、行動を起こしました。
石を投げられる犬
ブルガリアに住むアニー・バルコワさんはある日、学校の校庭で生徒たちに石を投げつけられている犬を発見します。
アニーさんはそれを見て「この犬を助けてあげなければ」と思いましたが、行動に移すには勇気が必要でした。
アニーさんは犬が苦手。
犬が怖かったのです。
「私が最初に犬を見たのは学校の校庭です。子どもたちのグループが犬に石を投げつけていました。犬は血だらけになっていて、私は犬のために何かしなければならないと思いました」
アニーさんはこの可哀想な犬を救うために、自分が頼れる大人である母親と祖父母に助けを求めました。
アニーさんは16歳の少女です。
治療を必要としている怪我をしている犬を救うには、どうしても大人の助けが必要でした。
ところが、相談された大人たちは「なにもできない」と断ってしまうのです。
子供が助けたいという思いを持っていても、大人がそれを拒否することは珍しくありません。
大人はこれから先のことも考えるでしょうし、大人なりの事情もあることは理解できますが、子供にとってはショックなことですし、こういう経験は後々まで、多分一生心のなかに澱のように残るのではないでしょうか。
筆者はそういう経験を経て、二度と見殺しにする自分でいたくないという想いとともに保護活動をしています。
大人に協力を拒否されるもあきらめない少女
普通はここで犬を助けることを諦めてしまうでしょう。
ところがアニーさんは諦めませんでした。
身近な大人に助けてもらえなかったアニーさんは、離れて暮らしている父親に助けを求めます。
アニーさんが電話をかけると2時間で迎えに来てくれると言ってくれたのです。
寒さの中、アニーさんは2時間以上もの間、犬と身を寄せ合って待っていたそうです。
父親はアニーさんと傷ついた犬のために毛布を持ってきてくれました。
一人でもアニーさんを助けてくれる大人がいたことに心からホッとします。
せっかく父親が迎えに来てくれたのに、実際に車に乗せて獣医に連れて行こうとすると、犬は乗車を拒否。
そのために、歩いて獣医に向かうことに。
車に乗せられて捨てられるなどの経験をしたことがある犬は、車に乗ることを嫌がることもあります。
筆者が山の中で保護した秋田犬も、保護当初はクルマに乗るのをとても嫌がりました。
それまで一緒にいた犬は車を怖がってか、獣医に連れて行こうとするアニーさんから逃げてしまいます。
それを見ていた友人が犬を捕まえ、獣医まで連れて行くのを手伝ってくれたそうです。
怪我と皮膚病に侵された犬を救う
アニーさんは犬にアルフェイヤという名前をつけました。
アルフェイヤは石を投げつけられたことによる怪我だけでなく、ひどい皮膚病にかかっていることも判明します。
疥癬などの皮膚病は激しいかゆみを伴い毛が抜けて皮膚がぼろぼろになるので犬が苦しむとともに、見た目から人間に恐れられ虐待されてしまう場合もあります。
しかし、疥癬は完治できる病気です。
症状がひどいと治療に何ヶ月も要しますが、感染当初に適切に治療すれば根絶は難しくありません。
これまでアルフェイヤに手を差し伸べてくれた人はアニーさん以外にいなかったのでしょう。
翌日、獣医にアルフェイヤの様子を見に来たアニーさんの母親が、アニーさんの気持ちを理解してくれたことで問題が解決しました。
アルフェイヤはアニーさんの家族になれることになったのです。
しかしまだアニーさんには乗り越えなければならない問題がありました。
アルフェイヤの治療には高額な医療費がかかります。
「アルフェイヤの治療は高額で、私たちはお金を借りなければなりませんでした。私達はあまり裕福ではありません。私は母と祖父母、そして猫と一緒に小さなアパートに住んでいるのです」
借金までして見ず知らずの犬を救う、これはなかなかできることではありません。
アニーさんとアルフェイヤは家族に
数々の難関を乗り越えて、アルフェイヤが家に帰る日がついにやってきます。
アニーさんはそれまで犬が怖かったし、アルフェイヤがどんな反応を見せるか不安だったそうです。
「アルフェイヤをお風呂に入れましたが、私はアルフェイヤが怖かったしアルフェイヤは水が怖かったのです。毛を乾かしてあげてベッドに連れて行くとようやくアルフェイヤは落ち着きました」
時間がたつにつれてアニーさんとアルフェイヤは打ち解け、仲良くなりました。
アルフェイヤは皮膚病が治り、フワフワの毛をもつ美しい犬に変身したのです。
自分の経験が他の人にも勇気を与え、他の犬も助けることにつながればと考えたアニーさんはこの話をネットに掲載しました。
「私は犬が怖かった。でも、私ができることがあるのに犬を苦しい状態のままにしておくことはできませんでした。
この話が善意の人に勇気と希望を与え、したいと思うことの手助けになれればと思っています」とアニーさんは話しています。
周りの大人に協力を拒否され(拒否した理由は理解できますが)、金銭的余裕がない中でそれでもアルフェイヤを助けることをあきらめなかったアニーさん。
彼女は犬が怖かったにも関わらず、アルフェイヤを助けるために奔走しました。
少女の信念と勇気ある行動が命を救った
東欧の国ブルガリアはヨーロッパに位置しますが、西欧諸国と比べると動物愛護に関しては関心が低いことは否めません。
動物愛護団体などもあるようですが、資金難等もあり西欧のような積極的な活動は行えていないようです。
日本も近年、動物愛護の関心は高まってきましたが、西欧に比べるとはるかに殺処分数も多く、ブルガリアとさして変わらない状況かもしれません。
政府が動物愛護に関心があり愛護団体などが行政と協力できている国のように、助けたいと思ったときに協力を求めるところがあればいいのですが、そうではない国や地域に住んでいる場合に命や生きる権利が保障されていない動物を助けることは大変です。
そんな状況の中、しかも本人が、犬が苦手であったにもかかわらず見捨てることをしなかったアニーさんは本当に善意の人であり、勇気がある人だと思います。
筆者が10代だった頃、そんなことができたでしょうか。
アニーさんの強い心が、アルフェイヤの命を救い、彼女の生きる世界を変えました。
その行動力と勇気には感嘆せずにはいられません。
出典:INSPIRED
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