
猫に必要な栄養素は?食べさせてはいけないものはある?
「食べる」という行為は、すべての動物にとって重要な習慣です。身体は食事から取り入れた栄養と水により成り立ち、生命を維持しています。
「生きる」ことは「食べる」ことなのです。健康的に生きるためには栄養バランスの良い食事をとることが大切ですが、動物の種類によって必要な栄養素は異なるため、人にとって栄養バランスの良い食事を猫に与えても、猫にとってのバランスが崩れ、病気の原因を作ってしまうことがあります。
また、ライフステージによっても必要な栄養素が異なります。愛する猫ちゃんが健康でいるためには、食事の管理が重要となりますので、猫の食事について知識を深めましょう!
猫に必要な栄養素
動物が生きていくうえで必要な栄養素は、<タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラル>の「五大栄養素」です。
猫は本来肉食であるため、タンパク質の多い食事が必要であり、主に植物に含まれている炭水化物はあまり必要な栄養素ではありません。
よって、理想的な食事は「高タンパク質・低炭水化物食」です。
猫に必要な栄養を与えるためには、適切なキャットフード(以下、フード)を選択することが重要です。
動物病院で販売されている獣医師の認めたフードは、良質な素材がバランスよく配合されていますので栄養の偏りを防ぐことができます。
手軽に入手できる市販のフードを与えたいと思っている飼い主さんも多いでしょう。その場合は、パッケージに「総合栄養食」と記載されたフードを選択してください。
「総合栄養食」とは、これと水さえ与えていれば、猫に必要な栄養素をしっかりと補えるフードのことです。皆さんも、今与えているフードのパッケージを確認してみてください。
それぞれの栄養素については以下でご説明します。

タンパク質
タンパク質は、筋肉や皮膚、毛、臓器など体を作るために必要な栄養素であり、たくさんのアミノ酸によって構成されているものです。
アミノ酸の中でも体中で十分に合成できないものを「必須アミノ酸」といいます。
猫の「必須アミノ酸」は数種類ありますが、特に「タウリン」を猫は体内で合成できないので、欠乏しないように注意が必要です。
タウリンが不足してしまうと、命に係わるほどの大きな病気の原因となってしまいます。
猫のタウリン欠乏症
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脂質
脂質は、エネルギー源です。脂肪酸やコレステロール、中性脂肪などにより構成され、特に脂肪酸は猫にとって重要なものとなります。
脂肪酸の中で、体内で合成できないものが「必須脂肪酸」です。
猫の必須脂肪酸のひとつである「アラキドン酸」は欠乏すると繁殖機能の低下や皮膚や毛艶の状態が悪くなってしまうため、食事から摂取しなければなりません。
アラキドン酸は肉や魚の脂質に含まれていますので、動物性の脂質を使用したフードを選択する必要があります。
ビタミン
ビタミンは、体の新陳代謝を助ける働きがあり、多くのビタミンは体内で合成できないため、食事から摂取しなければなりません。
ビタミンは「水溶性ビタミン(B群、C)」と「脂溶性ビタミン(A,D、E、K)」に分けられます。
水溶性ビタミンは過剰摂取をしても尿とともに身体の外に排出されますが、脂溶性ビタミンは肝臓など体内に蓄積されるため、過剰に摂取をすると病気の原因になりかねません。
猫は、ビタミンKとCは体内で合成できるため欠乏する心配はありませんが、その他のビタミンは欠乏してしまうと様々な生体機能に障害を与えてしまうので注意が必要です。
ミネラル
ミネラルは、骨や歯を構成し、体液の浸透圧やpHを維持するなど様々や役割があります。
欠乏よりも過剰摂取のほうが病気に繋がりやすく、特にマグネシウムとリンを摂取しすぎると、結石になるリスクが高まるのです。
また、ナトリウムを過剰摂取してしまうと、心臓や腎臓に負担が掛かるため、心臓病や腎臓病の原因となってしまいます。
これらのミネラルは、猫が大好きな煮干しや鰹節に多く含まれているため、日常的に与えている飼い主さんは注意が必要です。
炭水化物
肉食である猫にとって、植物性の栄養素である炭水化物は基本的には不要です。
また、体の構造上、炭水化物の糖質を消化・吸収することが苦手であるため、多くの摂取は猫の体には負担となります。
しかし、まったく必要でないわけではなく、動物性の食事だけではビタミンやミネラルが偏ってしまうので、栄養バランスを保つためにも少量の炭水化物は必要であり、フードにも含まれています。
ライフステージごとの注意点は?
成長段階により必要な栄養素は異なるため、その時期に合ったフードを与えることが重要です。それぞれのライフステージにより、フードを切り替えましょう。
ライフステージによる食事管理は肥満や病気予防に繋がるため、適切なフードを選択できる知識を身につけることが大切です。

成長期(~1歳まで)
生後4ヶ月までは、急激に成長する時期です。胃腸が未発達で消化する力が弱く、たくさんの量を食べることができないので、「高脂質・低炭水化物」の離乳食を与えます。
生後4ヶ月以上は、ゆっくり成長するため、必要なカロリー量は少なくなりますが、筋肉を成長させるために「高タンパク質」な食事が必要となります。
成長期に適したフードは「成長期・繁殖期用」または「子猫(キトン)用」となります。
維持期(1~6歳まで)
猫の一生の半分以上が維持期となります。そのため、この時期の食事管理がとても重要です。
最近は肥満傾向の猫が多く、特に避妊・去勢手術後の猫は太りやすくなります。
肥満は様々な病気の要因となるため、しっかりと食事で管理しなければなりません。
手術前は「成猫用」、手術後は低カロリー食の「避妊・去勢用」のフードを選択します。
妊娠・授乳期
妊娠・授乳期は、母猫が子猫にもエネルギーを分け与えないといけないため、より多くのエネルギーを必要とします。
そのため、「高タンパク質・高脂質」の食事を与えます。
また、タウリンが不足すると子猫の発育に障害をもたらしてしまうので、十分なタウリンを摂取することが重要です。
この時期は、「成長期・繁殖期用」のフードを選択します。
シニア期(7歳~)
シニア期は、心臓や腎臓機能の低下、関節疾患、歯周病など様々な身体の変化がみられるようになる時期です。
また、筋肉量が減るなどして基礎代謝が低下するので太りやすくなります。
そのため「低脂質・高タンパク質」の食事を与え、心臓や腎臓の負担となる、塩分が多く含まれている食材を与えるのは控えましょう。
この時期は「高齢猫用」のフードを選択します。
猫に食べさせてはいけないもの・注意するものは?
キャットフードは、猫に必要な栄養素がバランスよく配合されていますので、それに加えて人の食べ物を与えてしまうと栄養バランスが崩れてしまいます。
また、人の食べ物の中には猫が食べてしまうと命を落としてしまう恐れのある食材がありますので、基本的には与えてはいけません。
猫の命を守るために、人の食べ物は猫の手の届かない場所にしまい、飼い主さんの食事中に欲しいとおねだりしてくるようでしたら、食事中だけは部屋に入れないようにしたり、人が食事をする前に猫にフードを与え、お腹を満たしておいたりするなどの対策をとる必要があります。

食べさせてはいけないもの
猫が食べると命にかかわるほどの危険な食材は以下の通りです。
食材 | 原因・症状 |
---|---|
ネギ類 (ネギ・タマネギ・ニラ等) |
赤血球を破壊する物質が含まれているため、溶血性貧血や嘔吐・下痢・血尿などを引き起こし、重症の場合は死亡する。 原因物質は過熱しても壊れないため、ネギ類が含まれているスープなどにも注意が必要。 |
カカオ (チョコレート・ココア等) |
心臓血管や神経に作用する物質が含まれているため、下痢・嘔吐・失禁・てんかんなどを起こし、重症の場合は死亡する。 |
人の薬やサプリメント | 薬の種類によって、強い中毒症状や消化器・肝臓への障害を与え、重症の場合は死亡する。 |
ドッグフード | 猫と犬では必要な栄養素が異なるため、栄養バランスが崩れる。特にドッグフードには「タウリン」が含まれていないため「タウリン欠乏症」に陥る。 |
香辛料 (胡椒、わさび、からし等) |
胃腸炎を引き起こすなど、内臓に障害を与える。 |
牛乳 | 猫は乳糖を分解する酵素を十分に持っていないため、下痢を引き起こす。 |
アボカド | 強い中毒症状を起こし、痙攣・呼吸困難・消化器障害などを引き起こす。 |
与えすぎに注意するもの
適量を与える分には問題はありませんが、与えすぎると健康を害してしまう食材は以下の通りです。
食材 | 症状 |
---|---|
貝類、甲殻類、淡水魚 | ビタミンB1を分解する酵素が含まれているため、与えすぎると「ビタミンB1欠乏症」になり、食欲不振や嘔吐、ふらつき、痙攣などを引き起こす。過熱して与えれば問題はない |
青魚 | 青魚の不飽和脂肪酸により、猫の体内の脂肪が酸化し、皮膚の下に痛みを伴うしこりが形成される。 急性によるものではなく、長期間の偏食により発病する。 |
炭水化物(穀物や野菜等) | 下痢・便秘など消化器障害を引き起こす。 |
卵 | 卵に含まれる物質が、ビタミンBの一種であるビオチンを分解するため、与えすぎると「ビオチン欠乏症」になり、成長低下・血便・下痢などを引き起こす。過熱をすれば問題なく、適量であれば良質な食材である。 |
レバー | ビタミンAが豊富に含まれているため、与えすぎると「ビタミンA過剰症」となり、骨が変形してしまう恐れがある。ただし、適量であれば、良質な食材である。 |
上記の食材は、猫に与えてはいけない・与えすぎてはいけない代表的な食材ですが、この他にも与えてしまうと危険な食材が多く存在します。
これらの知識を飼い主がきちんと身につけていることで危険から猫ちゃんを守ることができるのです。
まとめ

大切な猫ちゃんにとって最も栄養バランスの良い食事内容は、「総合栄養食」のフードと水です。
食事は、猫ちゃんのすべてを作る素となるので、しっかりとした食事管理を行うことで、病気から猫ちゃんを守り、長生きをすることに繋がります。
これからも長く猫ちゃんと幸せな生活を送るためにも、普段の食生活を一度、見直してみてください。
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