生後6週間の幼い子犬が歩けなくなったという理由で、飼い主から「安楽死させてくれ」と獣医に置き去りにされました。

獣医は子犬の命を救う選択をし、子犬は健康を取り戻しました。

 

生後6週間の子犬が獣医に置き去りにされる

生後6週間の幼い子犬の飼い主が「歩けなくなった」という理由で、獣医に安楽死させるために連れてこられました。

そして、なんと飼い主はそのまま置き去りにしてしまいます。

 

たとえ安楽死しか道が残されていなかったとしても、最後まで見届け、遺体を引き取り埋葬してあげるのが飼い主の努めです。

しかし、この小さな犬の飼い主は治療の可否も確認せず、死を見届けることもせずに立ち去りました。

 

置き去りにされた獣医は子犬の様子を見て、安楽死はさせないことにし、「足が麻痺している」と言われた子犬を診療しました。

その結果、足が動かないのは低血糖症のためで、麻痺しているわけではないことが判明したのです。

 

 

早期の親からの離別、栄養失調がまねいた悲劇

子犬が十分生きられることを確認した獣医は、カルフォルニアの動物愛護団体「ハンド・イン・パウ(HAND IN PAW)」の創設者であるハイパー・ウッドさんに連絡し子犬を保護してくれるように依頼しました。

 

子犬はもともとボーという名前でしたが、ウッドさんはベラという名前をつけてあげます。

飼い主の責任を放棄し、具合の悪い子犬を置き去りにした飼い主がつけた名前はもういりません。

 

子犬は新しい犬生をこれからまた始めるのです。

 

 

 

ウッドさんは「子犬が低血糖症になったのは満足に食事を与えられていなかった可能性があります」と話しています。

 

幼い子犬や子猫は一度に少しの量しか食べられないので、1日に数時間おきにミルクや食べ物を与える必要があります。

そうしないと低血糖症に陥り命の危険があるのです。

 

筆者も過去何回も、捨てられて低血糖になってしまった子猫を保護した経験があります。

子猫の体はあまりに小さく弱く、命はあっという間に消えてしまうので獣医に早急に措置してもらう必要があります。

 

ベラは生後6週間でまだ赤ちゃんです。

まだミルクが必要ですし、4時間〜6時間おきの食事が必要です。

その世話ができない人がこんな幼い犬を飼ってはいけません。

 

また、生後6週齢ということは母親から離されるには幼すぎる月齢です。

動物愛護法令違反でもあります。

欧米の多くの国で母子の分離は生後8週齢以上を経過してからと定められています。

 

早すぎる母子分離は、命や健康を脅かすだけでなく、その後の成育や性格などにも影響が出るとされているからです。

 

 

2時間の点滴で歩けるように

獣医は早すぎる親からの分離、満足に世話をしてもらえてなかったなどのベラの背景に注意して治療した結果、急速に回復することができたそうです。

 

点滴を2時間受けるとベラは不安定ながら立って歩けるようになり、自分の口で食べ物を摂取できるようになるまで回復。

全く麻痺などではなかったのです。

 

安楽死させてくれと獣医に置き去りにされた子犬

 

 

「ベラを元気にさせることは難しいことではなかった。数種類の点滴で元気になれたのですから、安楽死させるよりも安い料金で救うことができました。」とウッドさんは語っています。

 

ベラの状況は全く安楽死に値するような重篤なものではありませんでした。

ベラを診察した獣医師の判断は正しく、そのことがベラの命を救いました。

 

いかに安楽死が選択されることが多いアメリカであっても、回復が見込めない状況ならともかく、点滴数本で回復するような子犬を安楽死させるなどしてはならないことですし、この獣医師がモラルのある人で本当に良かったです。

 

そもそもベラが歩けなくなったのは低血糖症によるもの。

つまりちゃんと食事を取らせていなかった可能性があります。

 

このような飼い主のもとでは多かれ少なかれベラの命は危険にさらされていたかもしれません。

皮肉にも獣医に置き去りにされたことでベラは救われたのです。

 

 

里親のもとで新たな犬生を

ベラが完全に回復するまでには少し時間がかかりました。

皮膚の感染症にかかっていたうえに、ベラは人間が怖かったのです。

 

「ベラは子犬とは思えないくらいにとても大人しかったです。ベラはずっと寝ていて、ずっと震えていました。ベラはとても可愛かったですが、怖がっていたのだと思います。」と当時の状況を語るウッドさん。

 

安楽死させてくれと獣医に置き去りにされた子犬

 

こんな幼い子犬に満足に食事さえ与えなかった飼い主です。

愛情も希薄だったことが伺えます。ベラは子犬にも関わらず、人間に大切にされたことがなかったのでしょう。

 

しかし、適切な診療と愛情のこもったケアによってベラは肉体的にも精神的にも回復することができました。

 

そして、ベラを大切にしてくれる家族と出会うことができたのです。

ウッドさんはベラを家族のもとに連れて行った時の様子をこう語っています。

 

「ベラを新しい家族のもとに連れて行ったときに、私は初めてベラが遊んでいるところを見ました。

10種類くらいのおもちゃが用意されていて、ベラは周りを走りまわり、幸せそうでした。

私はベラが怖がっている姿しか見ていなかったので、その姿を信じられない思いで見ました。ベラは確実に良くなっていますし、今は自分の家にいると感じています。

 

安楽死させてくれと獣医に置き去りにされた子犬

 

 

ペットを飼うという責任

ベラは救われて犬生を謳歌できるチャンスを得ましたが、簡単な治療で治る場合でも多くの犬が安易に安楽死させられている問題をウッドさんは指摘しています。

 

「一度迎え入れたら、ペットは家族です。病気や怪我などの健康問題に対処できないなら動物を飼ってはいけません」とウッドさんは話しています。

 

安楽死させてくれと獣医に置き去りにされた子犬

 

「動物を飼いたい」と、「動物を飼うことができる」と言うのは別問題です。

 

ペットを欲しくても自分のライフスタイル、経済状態、生活環境がペットを飼うことができる基準をクリアしていなければペットを飼うべきではないでしょう。

 

かつてある獣医が「経済的に余裕がない人はペットを飼うべきではない」と発言したところ批判されましたが、筆者は当然の主張だと思います。

 

人間の子供だったら法的に救済の手が差し伸べられることになりますが、ペットに関してはそうはいきません。

 

ペットは法的には物であり、生命も生きる権利も保証されていないからです。

つまり、ペットを守ることができるのは唯一飼い主だけであり、それができない人は飼い主になるべきではありません。

 

安楽死させてくれと獣医に置き去りにされた子犬

 

 

筆者も動物病院からの依頼で飼育放棄された病気の犬を保護したことがあります。

生後3ヶ月の子犬でした。

重篤な症状で飼い主が世話を放棄していたので病状が悪化しており、保護したものの長くは生きられませんでした。

 

病気で苦しい思いをしているのに、更に飼い主に疎ましく思われていた子犬はベラのようにおどおどしていました。

あの子の短い犬生は苦しみと悲しみばかりだったかと思うと今でも胸が苦しいです。

 

ペットショップで買った犬を家電のように返す(返品する)方がいますが、返品された犬のその後の犬生はどうなるのでしょうか。

中には何もケアされない犬がいるかもしれません。家電や本を返品するのとは訳が違うのです。

 

一度迎え入れたらどんなことがあっても最後まで責任を取る、その覚悟がない人はペットを飼うべきではないと思います。

 

ペットは生きているのですから、毎日の世話が必要で、お金もかかります。

病気にもなればけがをすることもあるでしょう。

生きているのですから当たり前です。

 

ペットを飼うためにはお金がかかるのです。

きちんと世話をしようと思えば、犬の場合の年間経費は数十万円に登ります。

十数年生きたとすると、数百万円の出費が必要です。

更に病気になれば、当たり前ですが医療費がかかります。

そして、世話をしてあげなければなりません。

毎日です。

 

ペットを飼育するにはその覚悟が必要なのです。

筆者が保護した子犬の元飼い主に、「あなたは今後ペットを飼うべきではない」と言うと、元飼い主は激怒しました。

 

病気になった犬の命を放棄し、おもちゃを新品に替えるように新しい犬を飼うなど、許されることではないと思います。

 

 

業界を忖度した実効性のない生後8週齢規制

自分が世話をできるかどうかをよく考えずにごく幼い犬や猫を欲しがる人は多いです。

ベラは生後6週齢。

本来は売買や譲渡されるべき月齢ではありません。

欧米では生後8週齢以下での親子の分離は違法です。

 

残念なことに日本では、まだまだ8週齢規制に関しても立ち遅れた状況です。

日本でも欧米にだいぶ遅ればせながら2012年に生後8週齢以下での販売禁止が明記されました。

 

しかし、努力義務な上に(努力義務なのでしなくても罰則はありません)附則に「生後56日(8週)」を「生後45日と読みかえる」というわけの分からない条項がついており、実効性があるかどうかは疑問が残ります。

 

欧米では動物のために明確に母子分離を8週齢以降と定めているのに対し、日本ではその限りではありません。

動物愛護法が誰のためにあるのか、疑問を持たざるを得ません。

 

ただ、そんな日本にも希望がないわけではありません。

2016年に札幌市「8週齢規制」を条例化したのです。

努力義務であるところは残念ですが、国が定めたような変な付帯はついていません。

 

まだまだ厳格に規定運用されているヨーロッパの法律には劣りますが、動物愛護が立ち遅れている日本において、政令指定都市とはいえ地方都市が独自に動物愛護に積極的に乗り出している姿勢に希望を持ちます。

 

アメリカでも「8週齢規制」は法によって定められていますが、ベラのようなケースもたくさんあるのです。

法を定めればごく幼い子犬が母犬から引き離されることが全くなくなるわけではないかもしれません。

 

しかしそれは日本という国においてしてはいけないことだとはっきり表明することは、動物愛護にとって重要な事だと思います。

 

動物愛護法は5年毎に見直しがされることになっており、来年2018年円はまさにその年です。

今後、真に動物愛護の精神に基づいて法の方針が決められることを願っています。

 

出典:the dodo

 

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