人は一日に朝昼晩で3回の規則正しい食事が推奨されていますが、犬は一日何回、どのくらいの量を与えると良いのか、不安や疑問を持っている飼い主さんは多いと思います。
 
人とは異なるバイオリズムを持つ犬に合う適切な食事量、与える回数、必要なエネルギー等について一緒に考えてみましょう。

 

犬の食習慣

犬の祖先といわれるオオカミは、群れで狩りをして得た獲物を皆で食べます。狩りで失敗したり獲物がいないときはエサにありつけないため、得た獲物を食べられるだけ一気に食べる、「食い溜め」のような食べ方をしていたようです。
 

オオカミの群れ

 

今からおよそ1万5千年前、中東でハイイロオオカミが人に飼われるようになったのが飼い犬の始まりと言われています。
 
人間の生活の主流が狩猟採集であった時代から集落を作って農耕により食料を蓄える時代に変わった頃から、人が犬に食べ物を与えるようになり、肉食であった犬が雑食になっていったと考えられています。

 

【年齢別】犬の最適な食事の回数は?

飼い犬の食事の回数は飼い主のライフスタイルによって様々なようですが、犬には一日に何回の食事が必要なのか、健康な犬の例で年代別にまとめてみました。

 

幼年期(生後2ヶ月~4ヶ月)

幼年期 犬
 

一日に必要な食事の量を2~4回に分けて与えることが望ましいです。幼い子犬は胃腸等の内臓が充分に発達しておらず、一日に必要な消化消費量を1回の食事ですべて補えないため、複数回の食事が必要です。

 

よく遊んで動き回る活発な子犬や、成犬時の平均体重が4㎏以下であるチワワやポメラニアン等のごく小さい犬種では3~4回程、あまり動かないおとなしい子犬や、成犬時の平均体重が10kg以下であるミニチュアダックスやシーズー等の小型犬、コーギーやレトリーバー等の中型~大型犬は2~3回が目安になります。

 

食事の時間の間隔は3~5時間位の大体で構いませんが、食事が足りないと低血糖を起こしてしまう恐れがありますので、活発に遊んだ後は少し早めに、安静時は長めに時間を空けても良いでしょう。

 

【幼年期の犬の食事の回数まとめ】

犬種 食事回数 食事間隔
超小型犬(チワワ・ポメラニアンなど) 3~4回 3~5時間
※ただし、活発に遊んだあとは少し早めに調整
小型犬(ミニチュアダックス・シーズーなど) 2~3回
中・大型犬(コーギー・レトリバーなど) 2~3回

 

成長期(生後5ヶ月~12ヶ月)

成長期 犬
 

一日に必要な食事の量を2~3回に分けて与えることが望ましいです。この頃には胃腸が発達してきて消化吸収力も高くなってきますので、どの大きさの犬種も2回程で問題ないと思いますが、食が細い犬や体が小さい犬には3回がベストでしょう。
時間の間隔は4~5時間程で心配ないと思います。

 

成犬期(1歳~6歳)

成犬
 

この頃になると体はある程度しっかり出来上がっていますので、基本的には1日1回で良いでしょう。空腹で胃液を吐いたりするときは2回にしたり、または夜(もしくは朝)に食事を与えている場合、朝(もしくは夜)におやつを少しだけ与えるのも良いでしょう。
 
食事の間隔や時間帯は飼い主さんのライフスタイルに合わせて決めて問題ありません。

 

ちなみに、妊娠期は普段通りで問題ありませんが、授乳期はいつでも必要なだけ食べられるように置き餌にすると良いでしょう。

 

老犬期(7歳以上)

老犬

 

若い時期を過ぎて段々と身体が老いていくと、それに伴って内臓の機能にも衰えが見えてきますので、1回だった食事を2回に、2回の食事であれば3回にと、回数を増やしていくタイミングです。
 
同じ年齢の犬でも、6歳以前と変わらず元気な犬と、著しく老いてきた犬とで個体差がありますので、飼い犬の状態と状況に合った回数を見出してください。

 

愛犬にとって必要な食事量の目安

健康な成犬にドッグフード主体の食事を与えている場合、フード袋の裏面や側面に表示されている給餌量の目安を参考にして、飼い犬の体型を観察しながら与える量を増減していく方法で最適な食事量を探っていきましょう。

 

手作り食の場合は、必須栄養素のバランスを考慮しながら、総体的なカロリーを算出し、愛犬に必要なエネルギー要求量(DER)を満たす量で与えます。
 
簡単な方法としては犬の手作り食のレシピ本、サイトやホームページで紹介されているメニューとカロリーを参考にすると良いでしょう。

 

数値をしっかり把握して対処するために、犬のエネルギー要求量(DER)を算出する計算方法は以下の通りです。(√(ルート)が付いている電卓で計算します)

 

エネルギー要求量(DER)=①倍増係数×②安静時エネルギー要求量(RER)
②安静時エネルギー要求量(RER)=70×体重㎏の0.75乗

※倍増係数については次項で解説いたします。
※体重の0.75乗の出し方は、体重3㎏の場合=3×3×3を計算して√(ルート)を2回押します。

 

与えているドッグフードの量がエネルギー要求量(DER)に適切か(または適切な量は何g/日か)は、以下の計算で導き出します。

 

エネルギー要求量(DER)×フード袋に記載されている100gあたりのカロリー×100=適切量g

 

たとえば適切量が120g/日であれば、2回の食事では1回60gが適切量です。

数値を目安に体型の変化を観察しながら調整していくことで、肥満や痩せすぎにならないようコントロールしやすくなります。

 

倍増係数の選択方法

 

避妊・去勢 × 1.8
1.6
不活発・肥満傾向 1.4
減量用 1.0
重篤管理 1.0
活動的 軽度 2
3
4~8

 

倍増係数の選択項目の内容を以下にわかりやすく説明いたします。

 

  • 避妊・去勢=している(○)か否(×)か?
  • 不活発・肥満傾向=肥満もしくは一日中寝ていることが多い。
  • 減量期=食事量の規制や積極的な運動等でダイエット中
  • 重篤管理=病気や疾患のために食事療法や服薬中、または運動障害や寝たきりの老犬。
  • 体重増加=普段の体重よりも増えた
  • 活動的(運動)
  • 軽度 1日1~2回飼い主と徒歩で散歩、室内で飼い主と遊ぶ。
    中度 1日1~2回3キロ程度のランニング(自転車で牽いて走らせる)
    激度 1日1~2回7キロ以上のランニング、フリスビーやアジリティの練習等

 

この中で、飼い犬の状況、飼育環境を考えて、最も重要と思われる係数の1つを使用してください。

 

カロリー要求量計算できますか?
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上手に愛犬の食事管理をする方法

ミニチュアダックス 食事
愛犬の食事管理は、ライフスタイルや犬の個体差による部分が大きいため、少しずつ調整を重ねてベストな量と回数を探っていきますが、その中でも幼年~成長期、老犬期では、安定する成犬期と違って考え方と対処法が異なります。

 

離乳食を終えて普通食になった生後2ヶ月~6ヶ月の幼年~成長期の子犬には、どのくらいまで食べられるか、食べ過ぎたらどうなるのかの自分の容量と限界を学ばせることと、胃腸をその犬に必要な大きさまで充分に育てるために欲しがる量を食べさせることを推奨します。

 

その後、生後8ヶ月くらいから食事量をコントロールして体型を維持していきます。
最初は自分の容量と限界量を考えずに食べるので、食事を吐き戻したり軟便になったりしますが、元気がある場合は特に心配はありません。
 
しかし何度も繰り返し吐いたり下痢が止まらない、元気がなくグッタリしている場合は、胃腸炎や別の病気の可能性懸念があるので動物病院で診てもらってください。

 

1日2~3回の食事を毎回残さず食べ、食べた後に心地良さそうに眠る量がベストな量といって良いでしょう。この時期の体型は多少太っている方が、不調のときに一気に体力を失って弱る心配がありません。

 

7歳以上の老犬は、動きに活発さがみられなくなることから、肥満を懸念して食事を減らしたり、ウェイトが軽いフードを選びがちですが、代謝と消化吸収の機能が落ちてくるため、むしろ少しエネルギー要求量が上がると考えて良いようです。
 
食事の量を増やすのではなく、フードに茹でた鶏胸肉等をトッピングしてタンパク質を補い、不足しがちなカルシウムやビタミンB群のサプリメントを与えるのがおすすめです。

 

この時期に最適な食事量を計る上で問題になるのが、食欲が落ちる、偏食になる等の理由で食事を残したりまったく食べなくなったりしてしまうことです。
 
その場合はフードのタイプを変えたり、2~3滴の酢やレモン汁、小さじ1杯の無糖ヨーグルトや納豆等をトッピングしたりしてみましょう。
 
このような香りが強い調味料や食材で嗅覚を刺激することで食欲が出てくることが期待できます。

 

いずれの場合も病気療養、服薬中は必ず獣医に相談してください。

 

まとめ

あらゆる面で人とは違う犬の食事についての悩みは、愛犬を見守り観察する飼い主の目と、ライフスタイルに合った方法と調整で解決していくことができます。
 
その際に、ここでご紹介したエネルギー要求量の数値も参考にするといいでしょう。
 
年齢期別でも対応の違いがあり、成長に応じた対処も必要です。

 

愛犬が毎日を健やかに過ごせるよう、身体を作る食事には気を使ってあげたいものです。
あまり神経質にならずに楽しみながら行ってみてくださいね。
 

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