
出会いと別れを繰り返しながら成長する「盲導犬」の一生
盲導犬を連れている人を街で見かけたことはありますか?
自動車、段差、階段など、街には視覚障がい者にとって危険がいっぱい。ともすれば家に引きこもりがちになってしまいます。
盲導犬は、視覚障がい者(以下、ユーザー)の目の代わりになり、外へ連れ出してくれるパートナーです。盲導犬は生まれてから引退するまで、たくさんの人たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していくのです。
今回はそんな盲導犬の一生をご紹介します。
戦争から始まった盲導犬の歴史

研究者によると、犬と人間の交流は約2万年前から始まったと考えられています。
ただしペットのような関係ではなく、食べ物の残りをもらうために近寄って来たのが始まりで、長い時間をかけて現在のような関係になったといわれています。
盲導犬としての歴史は古く、紀元1世紀ごろにイタリアにあったポンペイという村の壁には、目の不自由な人が犬と一緒に歩いている様子が描かれているそうです。
また17世紀の書籍には、犬の首輪に細長い棒をつけ盲導犬として訓練している様子も描かれているなど、古くから犬が人間の良きパートナーとして存在していたことがわかります。

現在のような盲導犬の訓練は1916年にドイツで始まりました。当時は第一次世界大戦の直後であり、戦争で失明した兵士がたくさんいました。
軍用犬の育成を行っていたハインリッヒ・スターリン博士は犬が視覚障がい者を手引きできるのではないかと考えました。その後、政府や訓練士の協力のもと、盲導犬の訓練方法が考案されたのです。
のちにドイツは世界各国に盲導犬の輸出を始めます。1939年に失明した軍人のために4頭のシェパードがやってきました。
この犬たちが日本で初めての盲導犬となり、日本の盲導犬の歴史が幕を開けました。
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盲導犬になるための厳しい道のり

盲導犬になるまで① 誕生~約50日
子犬を生む親犬は、「繁殖犬飼育ボランティア」と呼ばれる一般家庭に預けられて出産します。多いときは10頭も生まれることもあるそうです。
そこで愛情を受けながら過ごしますが、ずっと一緒に入れるわけではありません。
生後50日くらいになると、繁殖犬飼育ボランティアとの最初の別れが待っています。
盲導犬になるまで② 約50日~1歳まで
生後50日を過ぎると、子犬たちは、家族の一員として育ててくれるパピーウォーカーの家に引き取られます。
温かい家庭で育ち、人間を好きになることが盲導犬にとって必要なので、名前も付けてもらい、ここでもたくさんの愛情を受けながら育てられます。
盲導犬になるまで③ 約1歳~2歳前後

1歳になり、適性結果で選ばれた犬は、全国に数か所ある盲導犬訓練施設に移り、盲導犬となるため7か月間にわたる訓練を受けます。
ここで2度目の別れが訪れます。
どのパピーウォーカーも、別れの日は目が腫れるほど涙を流し、「立派な盲導犬になるんだよ」と言って送り出すそうです。
盲導犬の訓練は大きく分けて人間とコミュニケーションを取って行動させる「基本訓練」と、障害物を察知して移動する「誘導訓練」があります。
盲導犬がユーザーをリードしていると思われがちですが、ユーザー自身が危険を察知して盲導犬に指示を与えているのです。また、車が来ているにも関わらず前進の指示を出された場合は指示に従わないなど、高度な対応が要求されます。
どんな犬でも盲導犬になれるわけではありません。
厳しい訓練を受け、それに合格できるのはほんのわずか。
北海道盲導犬協会では年間60頭の犬を訓練していますが、盲導犬になれるのは15~17頭程度です。
全国でも千頭弱と少なく、需要に供給が追い付いていない状態です。
盲導犬になったら④ 約2歳~12歳くらいまで

盲導犬とパートナーになるには、ユーザーとの相性が大切です。
そのためにユーザーは訓練施設に宿泊し、4週間の共同訓練を行います。
それが終了したら晴れて卒業となり、盲導犬との暮らしがスタートします。
ただしすぐに息が合うわけではありません。
盲導犬もユーザーも慣れるまでには1年くらいは必要なようです。
こうして少しずつパートナーシップが築かれていきます。
盲導犬を引退したら⑤ 12歳くらいから

長らくパートナーだったユーザーとも、盲導犬として働けなくなったら別れなくてはなりません。
ここで3度目の別れが訪れます。
ペットであれば、そこで余生を過ごすこともできますが、どれだけ絆で結ばれていても盲導犬として活躍できない以上、ユーザーのもとを離れなくてはなりません。
引退した盲導犬は、訓練施設に併設している老犬ホームやパピーウォーカー、老犬委託ボランティアに引き取られ、初めて普通の犬としての生活を送ることになります。
北海道盲導犬協会を訪問しました

札幌市南区にある「北海道盲導犬協会」では、年間約12回の個人見学を実施しています。
内容は、盲導犬になるまでや訓練の方法、視覚障がい者への理解や盲導犬を含む補助犬に関する法律など、多岐にわたります。
説明の後は施設内の見学が行われ、老犬ホームや訓練犬の部屋を見ることができます。

1頭の盲導犬を育てるのにかかる金額は年間約500万円。
訓練や食事、衛生管理や健康管理のほか、盲導犬を希望する人の宿泊費や引退した犬の世話など、様々な費用が必要となります。
それらの費用のほとんどが寄付によって賄われていることに驚きました。
寄付は、コンビニや公共施設などに設置されている募金箱のほか、盲導犬協会でもサポート会員を設けています。ちょっとした協力でも盲導犬の育成につながれば嬉しいですね。
盲導犬は体の一部です

2003年に「身体障害者補助犬法」が改正され、公共施設やレストラン、公共交通機関などに盲導犬を含む補助犬を同伴して利用することが法的に認められました。
「補助犬同伴可」のステッカーを貼って好意的に迎えている店などがある一方で、衛生上の理由などにより、同伴を断るケースもいまだにあるようです。
盲導犬はユーザーにとって「目」そのもの。
まずは動物好きである私たちが理解を示し、そのような場面を見かけたときは、盲導犬の必要性について伝えていきたいですね。
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