ペットブームが巻き起こった当初、犬や猫等のペットを飼う人が爆発的に増えた反面、まだブリーダーやドッグトレーナーという職業も耳に慣れず、インターネットも身近なものではありませんでした。

 

そんな中でテレビのペット番組やペットの専門誌等から広まり、現在も根強く語られ続けている5つのメジャーなしつけの定説の真実について、我が家のダックス達の例と合わせて考えてみようと思います。

食事は犬より人間が先?

 

検証結果→食事の順番はしつけとは関係ない!

 

上下関係を教えるために、食事は飼い主が先で犬はその後に与えるのが望ましいというのがこの定説でした。

 

この説は、もともと犬の祖先であるオオカミが、捕獲した獲物を立場が上位の順で食べるといわれていたため、それに習って人間が上位であると犬に認識させるためという理論に基づいています。

 

しかし、この「オオカミが上位順で食べていた」という前提自体が、動物園などの狭い飼育下での限られた資源を取り合う環境で観察により導き出されたものだったのです。その後の研究で、野生ではこの限りではないことも分かっています。

 

つまりこれを元にして唱えられていた犬側の説に関しても根拠がなくなりました。

加えて犬はオオカミよりさらに順位付けという概念が緩く、現在では犬は人に対して順位付けはしていないと言う説が一般的です。

 

そもそも、日常で考えると人間はテーブルや食卓で食事をしますが、一般的に飼い主の食事の時に犬を同じテーブルに同席させることはなく、当然ながらオオカミの群れのようにひとつの食べ物を人間と犬とで分け合って食べることもないので、どちらが先に食事をしても犬の意識に影響を与えることはないでしょう。

 

ちなみに我が家の食事は16年間ずっと、ダックス達は夕方(先)、で飼い主は夜(後)ですが、これまで特に問題が起こった事はありません。

 

しつけ都市伝説

 

 

犬を叱るときは仰向けにすると良い?

 

検証結果→無理に仰向けにしちゃだめ!

 

犬は他の犬や飼い主に仰向けに寝転んでお腹を見せますよね。

 

もしもの時に一番防御が必要な弱点のお腹を見せることで相手に対して敵意が無いことを示し、信頼できる飼い主に対してはそれだけでなく、お腹を撫でて欲しい時や熟睡している時にもする仕草です。

 

このことを利用して人間に対して服従することを教えるために、飼い主の手で犬を仰向けにしてお腹を出させて叱ると良い、というしつけの定説があります。

 

そもそも服従や敵意がないサインとしてお腹を見せることは犬が自発的にすることに意義があるように思います。

 

飼い主の手で犬の体を仰向けにしても犬自身はそれを服従のサインだと認識するとは考えにくく、犬の思考で見れば仰向けにされる=叱られる=嫌なことという紐付けになってしまい、それ自体が嫌なイメージになってしまうかもしれません。

 

嫌がるのを無理やりおさえつけて、大人しくなったのを見て、「服従した」とみなす場合がありますが、これは回避することが難しいストレスや抑圧下に置かれた場合、逃げようとする努力すら行わなくなる学習性無力症と呼ばれる状態で、「強いストレス状態である」が正しい解釈です。

 

人間でもあまりに怒鳴り、頭から否定され続けると、反抗を諦め黙ってやり過ごそうとする時がありますね。これはまさしくあの状況です。

 

ちなみに我が家のダックス達の場合は、犬から先に出た要求には絶対に応えないことを徹底して繰り返します。

 

例えば犬からの散歩に行きたい、おやつが食べたい、遊んで欲しい等の要求(吠える、うなる、おもちゃを持ってきて誘ってくる)はすべて無視します。

 

しばらく時間を置き、犬が要求をやめて落ち着いたら今度は人間の側から散歩に連れ出したりおやつを与え、遊びに誘うのもやめるのも人間側のタイミングで行います。

 

これを継続している我が家のダックス達は、すべて飼い主の側から始まって終わる人間主導を理解しています。

 

しつけ都市伝説

 

 

犬は飼い主と家族に順位をつけている?

 

検証結果→犬は人間に対して上下の順位づけはしない!

 

犬社会は完全な縦社会といわれていることから、飼い主である家族全員に犬自身よりも立場が上か下か?の順位付けをしているという定説があります。

 

私が飼育の相談を受ける中で1番多いのが、叱った時に反抗する、全然言う事をきいてくれず制御ができないという悩みです。

 

ですが、犬同士での順位付けはされますが、犬が人間に対して順位付けをしないことが科学的に明らかになっています。

日常の中で家族それぞれに対する犬の懐き方をよく観察すると、それぞれ応対の分類をしているようにも見えます。

 

これを見て、順位付けをしていると見なす場合がありますが、過去の経験や学習、周囲のシチュエーションを見て判断しています。

 

いつもお母さんがご飯をあげる時に「待て」の練習をしているからできるだけであって、お父さんがやらせようとした時に出来ないのは「お父さんとは練習していないから」や、お父さんは「待て」をしなくても見逃してくれる経験をしているからなのです。

 
 

犬と一緒に寝てはいけない?

 

検証結果→一緒に寝ても大丈夫!

 

犬が飼い主と同じ布団で寝ると、寝床を同じくすることで立場が対等であると認識するため言う事をきかなくなる、というしつけの定説があります。

 

布団に入ると犬が飼い主にピタッと寄り添ってきたり、枕の横や足元であられもない寝相で熟睡したり…。飼い主さんの匂いに包まれて安心しきって眠っているのでしょうね。

 

これが同じ布団で日々一緒に寝ていて、犬が先に寝ている布団に飼い主が寝ようとしたら吠えられる、唸られる、というのであれば、犬が「ここはぼくの寝床だ!あっちへいけ!」と主張して、犬が飼い主に言う事をきかそうとしていることになりますから問題です。

 

また同じベッドや布団で寝る場合でも必ず用意しておかなければならないのが、犬専用の居場所です。

 

ベッドでもケージでも、いつでも安心して休める場所が別にあることで、飼い主のベッドを「自分の場所」を守ろうとすることを防ぐことができます。

 

ただし、既に唸る噛むなどの問題が出ている場合はこの限りではないがため、早急にトレーナーなどの専門家に相談しましょう。

 

しつけの問題とは別に衛生の観点から見ると、犬と同じ布団で寝ることは疥癬等の人獣共通の病気(ズーノーシス)に感染する危険と隣り合わせであるため、犬には別の寝床で寝かせるしつけをすることをおすすめします。

 

ちなみに我が家のダックス達は専有の部屋で寝かせ、一緒には寝ていません。

 

しつけ都市伝説

 

 

マウンティングは立場上位の主張?

 

検証結果→「上位主張だけではなく色々な理由がある」

 

犬がお気に入りのぬいぐるみや飼い主の足につかまって腰を振るマウンティングと呼ばれる行為、家に訪問したお客さんにされたら飼い主はなんだか気まずいですよね。

 

マウンティングは上位の立場を主張する行為であるというのが定説です。

 

まずマウンティングを行う相手が犬だった場合は、上下関係を主張するために行っている可能性があります。

そしてそれ以外にも、ふざけて遊んでいる場合や生殖本能からのマウンティングもあります。

 

更に「転移行動」や「転嫁行動」と言われる行動の場合もあります。

これは、犬が何かしら現状と相反する感情を持っている場合に起こる行動で、葛藤行動と呼ばれます。

 

例えば、家に来たお客さんに興味があって近づきたいが、初めて合う人なので少し怖いといった場合が考えられます。

この場合は知らない人に慣らす練習や、興奮を抑える練習をしておくと効果があります。

 

我が家のダックス達は、一方がやろうとすると激しく唸って怒り、深刻なケンカに発展することもしばしあります。

犬同士でふざけて遊んでいるとみられる場合は楽しそうに互いにマウンティングし合います。

 

生殖本能からとみられる場合は、発情期中のメス同士でも互いにマウンティングし合うことがあります。

 

我が家のダックス達にはどちらの場合であろうと人間に対するマウンティングをさせないようにしつけしています。

 

しつけ都市伝説

 

 

まとめ

一昔前まではこの5つのしつけの定説は犬を知る第一歩として根強いものでしたが、現在では明確に否定されていることもあるようですね。

 

我が家のダックス達との関わりにおいても「なるほど」と思う時もあるし、「違うんじゃないかなぁ?」と思う事もあります。

 

いろいろな犬種によって性質や性格、感情の持ち方にも個体差があり、飼い主のライフスタイルや日常ルールの違いもありますので一概には言えない事もあると思います。

 

「こうだったらこう!」と決めつけるのではなく、愛犬の個性や、前後の流れ、そして表情を見て気持ちを推し量ってあげることが大切です。

とはいえ、もしも犬が言葉を話せるなら、奥深いところまでじっくりとインタビューしてみたいですね。

 

※どこかに既に唸る噛むなどの問題が出ている場合はこの限りではない。早急に専門家に相談する旨を記載したほうがいいと思います

 

 

参考

APDT(Assosiation pet dog trainers)という世界最大の家庭犬トレーナー団体(世界最大)が、力や体罰で制圧するしつけはやるべきではないと声明を出しています。

 

さらに力や体罰によるしつけ方法は問題行動が悪化するという論文も発表されています。

(Herron M. E., Shofer F. S., Reisner I. R., (2009). Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors. Appl Anim Behav Sci. 117, 47-54.

Yin. S., (2007). Dominance versus leadership in dog training. Compend Contin Educ Pract Vet. 29, 414-417)

 

関連カテゴリ:犬のしつけ

 

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