
アニマル・ウェルフェアサミット 2017・滝川クリステルさんに聞く2年目のチャレンジ
昨年「アニマルウェルフェア」のメッセージを掲げて第1回が開催され、来場者2,000人という大盛況にて幕を閉じた「アニマル・ウェルフェアサミット」。
第2回となる今年のサミットに向けて、開催を担う「一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブル」の代表理事である滝川クリステルさんにお話を伺った。
「アニマルウェルフェア2016」と比べての変化
「アニマルウェルフェア」という言葉については、残念ながらまだまだ浸透しているとは言えません。
ですから、今年に関しても目的は同じですが、1回目と比べて変わったことは、プログラムで扱うテーマを多角的にした点です。
なぜかと言うと、「アニマルウェルフェア」という考え方はもともと、イギリスの畜産から来ています。「命をいただく動物に必要以上の苦しみを与えない」という考え方ですね。
それを歴史も含めて知ってもらうことで、「アニマルウェルフェア」をより深く理解してほしいという狙いがあり、そこをプログラムに取り入れています。
今回は糸井重里さんも参加予定
糸井さんとの対談の時に出演をお願いしたら快諾してくださいました。
糸井さんは「ランコントレ・ミグノン」という動物愛護団体を支援するなど、保護活動にも関わっています。
ご自身でもアプリを配信されるなど糸井さんならではの、アイデアの効いた試みをされているので、今回も独自の視点でお話が聞ければなと思っています。
去年は初めてのことで、どうなるか全く予想がつかなかったのと、直前で就任直後の小池都知事のご出演が決まったりしたので、私たちの想定以上に多くの方がいらしてくださいました。
大変嬉しいことではあったのですが、運営面から見ると入りきれない方がいらしたりと、反省点も多かったんです。
今回は安全面も考え、事前受付による人数制限をする予定です。と同時に会場も大きくし、より多くの方にご参加いただけるようにしました。
入場自体は前回同様にオープンにしています。
「アニマル・ウェルフェアサミット2017」で一番伝えたいこと
前回以降「殺処分ゼロ」という言葉がまず浸透してきていて、例えば東京都では小池さんの宣言通りに犬の殺処分ゼロが実現されました。財団としては嬉しく思っています。
ただその一方で解決しなければならない多くの課題も見えてきました。保護する団体の負担や、保護されている動物の現状です。
予算がなく決して快適ではない環境で、さらに病気や怪我を負っている場合もあります。殺さないのは前提にありますが、辛い苦しい状況の時にどうしていくべきか、「アニマルウェルフェア」に基づいて考えるとどうなのか。
「ゼロ」という数字にこだわりすぎないよう、冷静な視点で判断していけるように、全体のテーマとしてみんなで考えていけたらと思います。
「ローキル」の価値観を現場に提示して行く難しさ
医療でなんとか解決してあげたい、という気持ちは当然のことで、非常によくわかります。
一度関われば愛情も湧きますし、誰しもそう思うと思います。
ただそこだけに集中してしまうことで、結果的に他の子達を救う機会を逃してしまったり、その他のことがうまくいかない状況が起きてしまっているのも事実なのです。
この難しさをどう伝えて行くか、これは本当に難しい問題だと思います。
「アニマルウェルフェア」に基づいて「苦痛を与えない」ということ
殺処分ゼロに関していうと、現場にいない人の声、つまり実際にそこで苦しんでいる子や助けてあげようと頑張っている人のことが見えていない場所から出ている声が大きいのではないかと思っています。
でも本来のあるべき姿に近づくためには、現場に寄り添っていける状況を作り出していく必要があります。それを考えないといけない時期に来ているのではないでしょうか。
そもそも日本は体制もほとんど整っていないところで始めている難しさがあります。特に「アニマルウェルフェア」という考え方が全くなかった。食べる動物、飼う動物、どれに対しても「アニマルウェルフェア」に基づいて考えるという教育の素地がありません。そこから始めて、進めて行くことの難しさを日々感じています。
「アニマル・ウェルフェアサミット2016」開催後に感じた潮流
最近、小泉進次郎さんが政治の世界でも「アニマルウェルフェア」に基づいての考えや意見が出て来始めたとおっしゃっていました。
例えば外国では当たり前の食肉の認証制度など、オリンピックまでに整備されていないと恥ずかしいという考えです。
前回、来場者にアンケートをとりました。その結果で驚いたのは、動物を飼っていない方が半数以上だったことです。
そういう方達が聞きにきてくれて、「アニマルウェルフェア」という考え方を学んで、動物を飼うべきかどうかもう一度冷静に考えてくれる、そのきっかけになったと思うと非常に意義を感じます。
今回も写真を展示するブースを設置します。楽しく参加しながらも、きちんと現実も知って帰ってもらうのが狙いで、お母さんと一緒に見るとか、考える大事な機会にしてほしいですね。
根底にあるのは、東西洋間の価値観の大きな違い
終生飼育については、良し悪しを一概に語ることはできないと考えています。
これは死生観に関わることですし、東洋と西洋では考え方にそもそも大きな隔たりがあります。
先日聞いた講演では、魂と体のどちらに命が宿っているかという話がありました。西洋は魂を尊重するので、魂が離れたあとの体についての扱い方や考え方が東洋とは根本的に異なるというお話でした。
こうなってくるともう宗教観とか、日本人の美徳とか、価値観の話になりますので、そう簡単には解決できないなと。
このように色々な考え方や価値観をふまえて、それぞれの「アニマルウェルフェア」について考えてもらうことが出来ればいいなと考えています。
これからのペットショップを語りたい
例えばペットショップの最大チェーンである「コジマ」会長の小島さんが出演されるディスカッションがあります。
ペットショップにも色々な意見がありますが、ペットショップというものは現状存在しているもので、敵対視するだけでは解決しません。ただ否定するのではなく、どう変えていくのか、その点についてお話を聞きたいと思っています。
地域を含めた民間の連携はどのように進めて行くべきでしょうか?
財団として、東京都についてはオリンピックの効果もあり動きは早まると考えています。もう既に一定の成果は出ていますし、東京がモデルとなってどんどん地方の自治体へ発信がされていくのが理想的です。
フォスターアカデミーで育てていきたい「それぞれの保護活動」
やはり一番の課題は、人が足りていないということ。そのために保護活動をされているフォスターさん一人一人の負担が大きくなってしまっています。
善意で預かっているのに、預かりすぎてパンクしてしまうということが起こります。
ですから、新しく関わってくれる人のハードルを下げて行くことが重要な課題です。そうして人数が増えていって、フォスターになったあとの負担が減り、また新たな人が参加しやすくなる、良いサイクルが生まれてほしいと思います。
例えば預かりに拘らずに、それぞれの特技を生かしてみるといったことです。ある作家さんはご自身の手作り品を販売した利益を寄付されていたりします。
これは私たちも予想していなかった、嬉しい動きで、どんどん広がって行ってほしいと思っています。
そのためにも財団ではシェルターや保健所向けにアンケートを実施して、現場の現状を把握するようつとめています。
この結果についても将来的に発信していく予定です。
減っていない「猫の殺処分」
今はまだ猫の殺処分は多いので、その命をつないでいく流れを作りたい。子猫の講座を入れているのはその第一歩という位置づけです。ミルクボランティアを頑張ってやられている方達なんかにぜひ聞いてほしい内容です。
「アニマルウェルフェア」の芽吹き
まだまだ浸透してきたという実感はありませんが、今後大きく育って行ってほしい言葉です。その目的と狙いは2回目も変わりません。
社会という意味でもそれは同じことで、避けられない動きであると思います。
これまでは犬や猫に対してそれを使う機会は少なかったと思いますが、1回目以降、徐々に使われ始めていて、芽が出ていることは感じとれています。
言葉がまず浸透することで、言葉に込められた意味も広まっていってくれるといいなと思います。
「アニマル・ウェルフェアサミット2016」プログラム
前回行ったアンケートで、「犬と猫以外の話も聞きたい」というものがありました。先ほどお話しした、アニマルウェルフェアに源流に対する理解を深める意図もあって、今回は動物全体を対象とした内容を取り入れています。
<プログラム>
8月27日(日)
時間 | 会場 | |
10:00〜10:20 | 一条ホール | オープニング 「みんなで考えるアニマル・ウェルフェア」 |
10:30〜12:00 | 一条ホール | あなたにできること〜さまざまなボランティアのかたち |
アネックス | かわいい、楽しい!犬とのふれあい教室 | |
1号館 | ためになる子猫学〜哺乳類の正しい哺育 | |
2号館 | 保護犬・保護猫と暮らそう | |
13:00〜14:30 | 一条ホール | みゅーまるオリジナル音楽劇 「ぼくの声 きこえる?」 |
アネックス | 大宮エリーのライブペインティング | |
1号館 | 映画「夢は牛のお医者さん」 上映会&トークショー |
|
2号館 | 日本の動物たち〜動物園、野生動物、エキゾチックアニマル〜(〜16:30) | |
15:00〜16:30 | 一条ホール | トークショー 〜アニマルウェルフェアへの想い |
アネックス | 聴導犬・介助犬と仲良くなろう | |
1号館 | アマミノクロウサギ保護啓発ムービー上映会 |
8月28日(月)
時間 | 会場 | |
10:00〜12:00 | 一条ホール | 殺処分問題に取り組む行政 |
アネックス | ファンドレイジング講座 | |
1号館 | ペットショップの過去、現在、そして未来 | |
13:00〜14:30 | 一条ホール | 産業動物のアニマル・ウェルフェア |
アネックス | 里山を守る犬たち | |
1号館 | 動物愛護管理法の現状と未来 | |
15:00〜16:30 | 一条ホール | クロージング〜2日間をふりかえって〜 |
最後に「財団が注力していくこと」
全てに通ずることとして取り組んでいきたいのは「虐待」の問題です。
どこから虐待か?という点も含めて、価値観の理解を深めていく活動を行っていくことが最重要だと考えています。
あとはそれを推進していく体制づくりも同じように重要で、フォスターアカデミーを通して、そこも積極的に働きかけていきます。
こういったことは個人では出来ないことで、財団という形だからこそ、どれだけ貢献できるのか、見極めながらやっていきたい。
そのためにも色々な人を巻き込むことが必要だと考えています。
サミットのように、そのためにみんなが手をつないで目的を共有してもらう場を持つこと、それが一番大事で、大変なことでもあります。
「アニマル・ウェルフェアサミット2017 開催概要」
日時:2017年8月27日(日)、28日(月)
時間:10:00〜17:00(28日(月)は16:00まで)
会場:東京都文京区本郷7-3-1 東京大学弥生講堂、弥生講堂アネックス、他
入場料:無料(資料代等、一部有料のプログラム有り)
公式サイト:https://peraichi.com/landing_pages/view/aws
「一般財団法人 クリステル・ヴィ・アンサンブル」
人間を含め、全ての命が共存・共生し、調和する社会の実現を目指して設立。「VIE ENSEMBLE」はフランス語で「ともに人生を歩む」「一緒の命」の意。同じ価値の命が違いに支え合う社会の実現を目指す。
公式サイト:http://christelfoundation.org/
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