
猫の殺処分をなくしたい!保護猫の命を救う札幌市の取り組み
年間79,745匹。これは2014年に殺処分された猫の数です。ひとつの市の全人口に匹敵する猫が強制的にこの世を去ったといえば、その数の多さがよくわかることでしょう。
それでも、動物愛護法の改定やボランティアの活動により、10年前と比較して4分の1にまで減ったそうですが、まだまだゼロには程遠い状況です。
「命を救うために何ができるのか」、札幌市への取材を通して、動物を飼うことへの責任について考えてみます。
※本記事に掲載の猫の写真はイメージであり、本文と関係のない写真が含まれていることをご了承ください。
なにが猫たちを死に追いやるのか?
猫愛が多頭飼育崩壊を生む
多頭飼育崩壊という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
文字通り、数が増えすぎて飼うのが困難な状況です。
猫は1度の出産で5~6匹ほどの子猫を産みます。
「かわいい」「家族の一員だから離したくない」と飼い続けていくと、また子猫を産みます。そうして次々と繁殖し、気が付けば飼い主の手に負えない状況になってしまうのです。

一人で100匹以上の猫を飼っている人も!
多頭飼育崩壊にならないためには、最初の段階で去勢する必要があるのですが、費用が2万5千円から3万円もかかるので経済的負担が大きいです。また、かわいい猫の体に傷を付けたくないと考える人もいるでしょう。
しかし多頭飼育崩壊になると、去勢しようにも、お金がかかりすぎてもはや手遅れ。
増えすぎて世話もできないようでは、「かわいがっている」とはいえません。
それでも繰り返される・・多頭飼育崩壊について考える
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商業的利用が猫を使い捨てる
猫カフェは、かわいらしい猫と触れ合えることで大人気です。
住宅事情で猫が飼えない人だけでなく、「たくさんの猫に囲まれたい」と、猫を飼っている人も訪れています。
オーナーさんも猫好きな人が多いはずですが、猫を置き去りにしたまま失踪するなど、悲しい事件が起きています。

「猫が好き」というだけではカフェは成立しない
記憶に新しいのは、鹿児島市の猫カフェ「にゃんCafe猫之坊」の経営者失踪事件です。
動物愛護団体が「猫が騒いでいる」という通報を受けて駆け付けると、汚物やゴミであふれ返った店内に4匹の猫が息絶えているのを発見、生きている13匹を保護しました。
店は1年前から営業していなかったようで、動物虐待の疑いがあるため、市は警察に相談しているそうです。
動物の愛護及び管理に関する法律

動物たちにも生きる権利がある
人間に「人権」があるように、動物たちにも生きる権利があります。それを明文化しているのが「動物の愛護及び管理に関する法律」です。
動物虐待を禁止するのはもちろん、2013年の改正では、飼い主やペット業者の責任や義務の強化、実物を見せないペットの販売の禁止、飼い主はペットが死ぬまで飼い続ける責務があることなどが盛り込まれました。
多頭飼育崩壊も商業的利用による放棄も、この法律に触れる可能性があります。
猫たちの末路
数年前に、捨て猫を拾った少女が、「里親を探したが、どうしても見つからなかった猫を保健所に連れて行く」とツイートしたことに対し、「保健所に連れて行くな」と発言してTwitterが炎上した女性タレントがいました。
一体、保健所に猫を連れて行くとどうなるのでしょうか?

階段には最後のお願いが掲げられていました
保健所に持ち込まれた猫は、3日から7日間の「猶予」が与えられます。
野良猫や捨て猫だけでなく、多頭飼育崩壊にあった飼い猫も持ち込まれます。
期限内に飼い主や里親が見つからない場合は「殺処分」が待っています。
ガス室に入れられるか、注射を打たれて強制的に命を絶たれる。これが自称「猫好き」の招いた猫たちの末路なのです。
命を救う 札幌市の取り組み
「できるだけ動物たちを殺したくない」
札幌市は保護した動物たちを生かすことに力を入れています。札幌市動物管理センターに、取り組み状況と成果を伺いました。

札幌市では、2015年に策定した「動物愛護管理基本構想」を掲げ、「人と動物が安心して暮らせる街」の実現に向け、野良犬や飼えなくなった犬や猫などの引き取りを行いつつ、収容した動物の返還・譲渡を進めています。
特に殺処分となる犬や猫を減らすために、飼い主に向けた終生飼育・適性飼育に関する普及啓もう活動を行うとともに、新たな飼い主探しに積極的に取り組んでいます。

札幌市は市民の協力を得て3年連続犬の殺処分ゼロを達成!
その結果、犬に関しては、2007年に年間172件あった殺処分が、2014年より今日まで殺処分ゼロを達成。収容数も2006年の728頭から2016年には209頭に減少しました。
猫に関しては2007年に年間1840件あった殺処分が、2014年は534件、2015年は48件、2016年には1件にまで激減。収容数も2007年の2,056匹から2016年には1,129匹に減ったものの、犬に比べてはまだまだ圧倒的な数となっています。
収容される犬猫が減少したのは行政の努力だけでなく、個人や愛護団体の協力があってこそ。
「収容された犬や猫を引き取りたい」「病気の犬猫の最期を看取りたい」と引き取ってくれる優しい気持ちに支えられています。
今回お話を伺った市の担当者は、20年前まで殺処分に関わっていたそうで、「殺処分しなくてはならない日は、もう一度リストを確かめて、飼い主が探していないか確かめました」と、最後まで救う方法を考えていたといいます。
自らも犬を飼っていたそうですが、「今はいろいろと心に残るものがあって、飼えなくなりました」という言葉が印象的でした。

何かを訴える猫の目。取材中にいたたまれなくなった
殺処分しない方針のため、収容施設にはたくさんの犬や猫がいます。
トラックからまた新しい猫が運ばれてきました。どれもペットとして飼われていた動物たちです。
人を見ると吠えまくる犬や、うつろな瞳の猫。
この子たちは、家族の一員として迎えられかわいがられた頃と現在とのギャップをどう思っているのでしょうか。
あえて飼わないという決断も

命を救うためにはどう考え、何をすべきか
「あえて飼わないという決断もしてほしい」
仕事上、何匹も殺めてしまった動物管理センターの方の言葉が心に響きます。
飼っている動物の数が増えれば餌代や医療費がかかります。それだけの数の世話ができるのか、経済的にまかなえるのか。無理のない範囲を考えなくてはなりません。
「かわいい」「家族の一員」といって数を増やしすぎた結果、どうにもならなくなって投げ出したときに、一番傷つくのは誰なのか。もう一度考えてみましょう。
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