
うちの子が痩せたり、太ったりするのはどうして?犬とは違うよ、ネコちゃん食餌編(前編)-この子の病気は私がみつける!
暑くなりましたね。気温も湿度も高くエアコンつけっぱなしの日々です。
蒸し暑さと寒暖差の影響で、最近の外来診察は嘔吐・下痢を症状とする犬が多く見られる時期です。
お家のワンちゃんは大丈夫でしょうか?気温が下がってくると逆に湿度が上がってくるので、夜にハアハアするといわれることもあります。心臓や肺の病気の動物達には大変な時期なのでよく観察するようにして下さい。
その点、ネコちゃんは家の中で涼しいところを見つけるのが上手ですね。
うちのネコが寝ているところで、一緒に横たわってみると風が動くことを感じられます。(そこにいたネコはめんどくさそうな顔して、他の場所に移っていきますが….)
ここ最近コラムは食餌についてお話ししてきました。コラムを書きながら“これは犬の話だよね。猫は違うよな”という部分もありましたので、この辺りで猫の食餌について触れていきたいと思います。まずは、基本的なところから見ていきましょう。
猫の生態と食餌の基本
猫は肉食動物!!
肉食動物=お肉大好き=タンパク質豊富な食餌が必要
ご存知の通りです。ここが雑食の犬とは決定的な違いです。
タンパク質の構成成分(アミノ酸)の中でもアルギニン、タウリン、メチオニン、シスチンは特に重要で、ほとんどのキャットフードはタンパク質の配合割合が多くなっており、タウリン配合と謳っている商品が多いのはこのためです。
猫はグルメ!?
猫は舌触り、におい、味に敏感
食餌の温度も38.5度(体温と同程度)がお好み
食欲不振や病気の時に“温めて食べさせて”と動物病院で指導されるのはこのことが根拠となっています。
また、フードへのこだわりが強く(生後6週までの食餌が嗜好に影響)1種類のフードしか食べない猫にも出会います。
将来的に病気の管理でフード変更が必要になることも考慮すると色々なフードを試しておくことが重要になります。
炭水化物の消化力に限界がある
肉食に特化して進化してきたので当然の結果ですが、フード中の炭水化物量が35%までならば適応可能です。
しかし、40%を超えると消化不良を起こすといわれています。フードを変更する時に注意が必要です。
高濃度の動物性脂肪も消化できる
脂肪酸の中でもアラキドン酸を体内で合成することが苦手で、アラキドン酸は動物の組織に多く含まれている成分、肉食なので食べて補っています。ですから犬の場合は低脂肪をうたっている処方食がありますが、猫は極端な低脂肪食にはなっていません。
水分
ご先祖様が砂漠に生息していたため、乾燥環境に適応しています。
逆にいうと
水を飲まない→尿が濃くなる→尿石症などの猫下部泌尿器疾患のリスク↑
ということです。
猫用フードで尿石対策を謳っているフードが多いのはこのためです。
成書では飲水量1ml/kcal(代謝エネルギー)以上とされています。猫の飲水量チェックはちょこちょこしか1回に飲まないので、実際の量を計測しにくいですが、ほとんどの疾病は尿量が増えますので、トイレ掃除の時に排尿状態をチェックしましょう。
うちの子が痩せたり、太ったりするのはどうして?
ここまでは猫の生態と食餌の基本的な部分を紹介しました。それでは本題の“うちの子が痩せたり、太ったりするのはどうして?”部分をお話します。
猫のボデイコンディションスコア(BCS5段階評価)と年齢の関係
・BCS4-5:6歳〜12歳までは全体の40%程度、12歳以上で減少傾向
・BCS1-5:6歳〜12歳までは全体の10%以下、12歳以上で増加傾向
以上のようなデータがあります。
よって、12歳までは肥満に注意、12歳からは痩せていくことに注意ということになります。
実際にハイシニアといわれる年齢に達していますし、猫の代表的“痩せていく病気”の腎臓病の発生年齢平均が10−13歳、甲状腺機能亢進症の発生年齢平均が13歳ですので関連ありそうです。
太った猫を痩せさせるには?(猫を痩せさせるのは意外と大変!?)
人においても様々な減量方法(ダイエット法)が紹介されている時代ですので、ご存知の方も多いと思いますが、
炭水化物=糖
血糖値の上昇→インスリン分泌多い→脂肪の蓄積が促される
という流れを断ち切るために、炭水化物を減らして痩せようという目的で考案されたのが、低炭水化物ダイエットと呼ばれているものです。
“え!でも猫は炭水化物多いのはダメって書いてましたよね?”と思われた方、勘の良い方ですね。その通りです。
基本項目でお話ししました、猫は肉食動物。この部分が大きく関わります。猫はもともと低炭水化物ダイエットと同じような食餌をして、脂肪の制限も厳しくできないですから、それでも太ったということは…、なので意外と減量が大変なのです。
それでもフードの原材料として使用されるインスリンの応答が少ない炭水化物は猫でも調べられていて、代表的なものは、大麦、トウモロコシ、ソルガム(きび)とされています。
一番反応してしまうのは“米”です。減量をはじめる時にはフードの炭水化物源を確認して見ましょう。炭水化物を代謝エネルギーの20%以下に制限することも減量に効果的とされています。
また、脂肪については高濃度の動物性脂肪も消化でき、極端な低脂肪食にはなっていないのですが、それでも脂肪はタンパク質や炭水化物よりもエネルギー量が多いので、量が少なくなっているほうが減量には効果的と云われており、代謝エネルギーの25%以下が推奨されています。
ネコを減量させる時の注意点
食餌カロリー編でお話ししましたが、
1日あたりのエネルギー要求量(DER)
=倍増係数×安静時エネルギー要求量(RER)
という式がありました。
この倍加係数が正常ネコの場合、1.2~1.4倍です。ということは、減量前の食餌量の70%にしただけで、安静時エネルギー要求量(RER)を下回ってしまいます。
安静時エネルギー要求量(RER)は理論的には最小必要エネルギーなので、極端な食餌制限が肝臓に影響して肝リピドーシスという疾患のリスクが増える可能性があります。
体重を減らす量(体重減少率)を週あたり0.5~1%にした方が安全です。(減量完了までの時間は長期間になることになります。)
最後に
今回はネコちゃんの食餌のお話をしました。私もネコを飼っていますが、食餌を待ちきれないネコやチョボチョボ食べて体重維持しているネコなど様々です。
エネルギー代謝の状態は個体差があるので、計算したようにいかないことも多々あります。
フード量の変更した場合には、初めは2~3週に1回検診して食餌量の再調整をお勧めします。
イラスト:Mayumi Mori
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