
劇的な運命で命を救われた3本足の元保護犬ー結婚式のリングベアラーを務める
欧米の結婚式では新郎新婦の指輪を運ぶ役目の人がおり、リングベアラーと呼ばれます。
動物好きの新婦のために、その大役を仰せつかったのは3本足の元保護犬でした。
特別なリングベアラーを依頼
結婚式を控えたデイビット・ミッシェルさんは結婚式を特別なものにしたいと考えていました。
新婦のジェニーさんは動物が大好き。
そのため、友人のトッド・エムコさんに彼の犬と一緒に出席してほしいと頼みました。
さらに、ただ出席するだけでなくその犬に結婚式で重要な役割を頼めないかと聞いたのです。
その重要な役割とは「リングベアラー」。
新郎に指輪を届けるというとても大切な約目です。
トッドさんの愛犬はピギー。
3本足の元保護犬です。
ピギーの飼い主であるトッドさんは、病気や怪我をした動物を助ける活動をしている団体「ダーウィン・アニマル・ドクターズ」の共同創始者です。
ダーウィン・アニマル・ドクターズはアメリカだけでなく世界中の動物を救う活動をしており、ピギーもその活動で救われた犬でした。
運命を変える劇的な出会い
2009年、ピギーはドミニカ共和国のビーチで保護されました。
保護された当時のピギーはガリガリに痩せていて、しかも足に大怪我を負っていたために歩くことができませんでした。
現地の人の目撃証言によると、ピギーはバスに轢かれて足をけがしたのですが近隣には獣医がおらず、さらに野良犬だったピギーを積極的に助けてくれる人はいませんでした。
放置されたピギーの足はどんどんひどくなり、歩けないので食べ物を探すこともできません。
そこにダーウィン・アニマル・ドクターズがアメリカからやってきたのです。
診療所を開設すると、気の毒に思った地元の人がピギーを連れてきてくれました。
ダーウィン・アニマル・ドクターズのスタッフであるトッドさんと友人のアンドレア・ゴードンさんはピギーを保護し、診療所で応急手当と栄養補給を行いました。
しかし感染症が進行していたピギーは外科手術が必要なほど重篤な症状で、放っておけば死が待っていることは確実でした。
簡易な診療所ではできません。
そこで、トッドさんたちはピギーをアメリカに連れて行くことを決意したのです。
この出会いがなければピギーは死んでしまっていたでしょう。
遠く離れたアメリカから動物を救うためにやってきたトッドさんと出会えたことは、ピギーにとってまさしく運命を変える出会いでした。
遠く離れた地からアメリカへ渡ったピギー
「私はピギーを見つめ、ピギーは私を見つめました。私たちは彼を救わなければならないとわかっていました。」
ピギーはもはや足を切断するしかなく、その後も継続的にケアを施さないと命がないこともわかっていたのです。
ピギーという名前をつけたのはトッドさんとアンドレアさんですが、保護当時ピギーには毛がほとんどなく、子豚のようだったからなのだとか。
ニューヨークで暮らし始めたピギーは見違えるようになり、フサフサの毛を持つ美しいボーダーコリーになりました。
ピギーは手術を受けた後、元気を取り戻し、トッドさんの家族になりました。
3本足での暮らしにも慣れ、走ることだってできます。
「いつも彼は4本足の犬より早く走るんですよ」
そして、ダーウィン・アニマル・ドクターズのマスコット犬としてイベントなどに参加し、動物愛護活動に貢献しています。
ぜひともピギーに指輪を届けてもらいたい
様々なイベントに参加経験のあるピギーですが、結婚式でリングベアラーを務めるのはもちろん初めて。
友人からその依頼を受けたトッドさんもびっくりしたそうです。
びっくりしたのはそれだけではなく、なんと新婦のジェニーさんからもデイビットさんを驚かせたいからピギーにリングベアラーをしてもらえないかと同じ相談を受けたことです。
しかも同じ日に。
価値観が似通っている2人は考えることも一緒なのですね。
同じ日に同じ依頼をしたと気がついたデイビットさんとジェニーさんは更にびっくり。
お互いを驚かそうという思惑は残念ながら失敗に終わったわけですが、2人共ピギーにぜひともリングベアラーをお願いしたいと考えました。
結婚式で大役を果たしたピギー
ピギーは3本の足でしっかり大地を歩き、結婚式当日には見事に大役を果たしました。
「ピギーは真剣に使命を果たしました。大勢の参列者がピギーに話しかけたりなでたりしましたが、ピギーは礼儀正しくにっこり笑ったり頷いたりしながら通路を歩き切りました」
と当日の様子を話すトッドさん。
そして、花嫁と花婿のもとに到着したピギーは自分が何をすべきか理解しているように見えたそうです。
「ピギーは結びつけてある紐を解いて指輪を外すときもおとなしく座っていました。ピギーは草の上に伏せ、新郎と新婦を見上げていました。すべて計画通りに進みましたが、ピギーが指輪を届けたときには新郎と新婦は感極まってしまったようです」
ピギーは式の間はとてもいい子にしており、披露宴の間はゆったりと過ごしたそうです。
ピギーは子共にも大人にも大人気。
誰もがピギーをなでたがったのですが、ピギーは愛想よく対応しました。
「ピギーと目があったり、前足を乗せたりするとみんな大喜びでした。結婚式のカメラマンが、すべての結婚式に犬が参加すべきだと言ったほどです」
とピギーがみんなから歓迎された様子を話すトッドさん。
ピギーは今回トッドさんの友人のために一肌脱ぎましたが、実は団体の啓蒙活動のために学校や図書館などの教育施設を何度も訪れたことがあります。
ピギーは大人気だし、人と接することが得意なのです。
ニューヨークに住んでいればピギーに会えるチャンスもあるかもしれませんね。
すごくうらやましいことです。
国際会議に参加するピギー
2017年8月6日、ピギーはなんとアレキサンドリアで行われた国際的な動物の権利の会議「 National Animal Rights Conference 」に参加したとのこと。
ピギーは国際的にも動物保護の象徴的な存在として活躍しているのですね。
この堂々とした姿はドミニカ共和国のビーチで命の危機に直面していた犬と同一とは思えません。
全ての犬がピギーのように救われ、幸せに生きることができるように願わずにはいられません。
出典:Three-Legged Rescue Dog Loves His Job As Ring Bearer In Wedding – the dodo
出典:Stray Dog Loses A Leg But Gains Something Incredible – the dodo
関連カテゴリ:感動
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