この夏は、糖尿病の犬・猫が立て続けに来院しました。季節の病気ではないので、集中したのは偶然でしょうけど、厄介な病気なので、検査も治療も大変です。可愛がっている動物のためですが、飼い主さんにとっても時間管理、食餌管理、投薬管理など手間の多い病気です。原因が多因子の病気なので、太っていたら絶対に糖尿病になるわけではないにしても、体重管理はした方がいいと思います。

前回は猫ちゃんの食性と減量についてお話ししました。今回は逆に猫ちゃんに見られる“食餌も変えていないのに勝手に痩せていく”ことについてお話ししましょう。

痩せていく猫 “うちの子病気ですか?”

“〇〇ちゃん、痩せましたね”

“よかったね〇〇、昔はもっと太っていたのに”

 

“随分痩せてますが、いつ頃からですか?

“え、痩せてますか?毎日見ているとわからなくて”

 

1年間に何度となく繰り返されるこの会話ですが、確かにお家で頻繁に猫ちゃんの体重を測らないですしね。しかし1年がかりで痩せてきたのと、数週間で痩せてきたのでは話が変わってきますし、疾患を疑うかどうかも変わってきます。なるべくお家でも定期的に体重測定とBCSをチェックしていくことをお勧めします。また食欲があるのかどうか(以前食べていた量と比較して)も観察必要です。

 

どのぐらい痩せたら、おかしいの?

減量目的で食餌療法を行なっている猫以外で、持続的な体重減少が認められたら、やはり獣医師としては“病気で痩せているのではないか?”ということを疑って確認することからはじめます。診察時には以下のようなことをチェックしていきます。

 

・前回体重測定から何%の減少なのか。(〜2%、〜5%、〜10%、それ以上)

・食欲はあるのか、食欲にムラがあるのか、食欲がないのか。

・身体検査、血液検査などの検査に異常はあるのか。

 

これらの要素を総合的に判断して、治療に結びつけていきます。

 

 

痩せていくということはどういうことなのでしょう?

基本の図式

INの減少 or 消費もしくはOUTの増大

INの減少とは

・必要量を摂取できているか(食べ物の問題、口内が痛くて食べられないなど)

 

消費もしくはOUTの増大とは

・慢性疾患の有無(心臓病、糖尿病、ホルモン疾患、腎臓病、腫瘍など)

・消化・吸収ができているかどうか(嘔吐、下痢、多尿など)

 

大まかに分類すると上記のようになります。

必要な量が与えられていない/食べられていない(質・量・飼育環境の問題)は省略します。

 

飼い主さんが見落としがちな症状

・口腔内疾患(歯周病、口内炎など)による疼痛は食べない原因になります。よだれを垂らす、口周りを触られると極端に嫌がるなどの症状があればわかりやすいですが、食べている最中に“にゃ!”と鳴いて食べることをやめたり、よく食べる日(痛くない日)と食べない日(痛い日)があるなどの“日によってのムラ”があるだけの子は様子を見てしまいがちなので注意してください。

 

水を飲むという行動は元気な証拠のように捉えていませんか?

“うちの子よく水を飲んでいます。”とお話しいただくことあります。尿石対策用のフードを使用している場合、確かに飲水量は増えます。しかし、水を飲んでいる姿を頻繁に目撃し、痩せてきたとなれば、病気の可能性があります。尿量のチェックも同時に実施しましょう。ほとんどの病気は先に尿量が増えて、その後に水を飲むようになるので尿チェックが最優先です。

 

高齢になっての消化器症状(嘔吐・下痢)は要注意

 

“最近よく吐くな”

“なんか軟便なんだよね”

“でも食欲あるし元気もあるから様子見よう!

 

となりがちですが、消化管腫瘍の場合でも最初のうちは軽い症状です。検査をしていても、経過を見て再検査していくうちに消化管肥厚(厚くなること)するような緩徐に進行するものもあります。

一方、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症も嘔吐・下痢が主訴で来院することも多い病気です。ですから、“そういえば最近”という認識の場合、かかりつけの病院で相談して見ましょう。

 

 

最後に 病気でないのに痩せていく場合はないのでしょうか?

実際、各種検査で問題がないこともあります。

それは老化という現象です。

老化によって消化機能の低下が起こり必要なエネルギーを吸収できなくなります。1日に食べる量も少なくなり、さらにエネルギー不足に陥ります。蓄えていた脂肪だけでなく全身の筋肉が減ってしまうので簡単に体重が戻りません。シニア用とされているフードは老化によって消化機能の低下に対応して、成猫用よりシニア用の方が高カロリーになっているものがほとんどです。

逆に、“11歳や12歳になったからフード変えたらどんどん太ってきたこのまま続けても良いでしょうか?”ということも起こります。かかりつけの先生とフード変更する時期や内容について相談することも必要だと思います。

 

今回は、“うちの子、痩せてきた”にまつわるお話をしました。私の家の先代猫たちも17、18歳ごろには、食べていてもBCS2程度で痩せていました。起きているところを見るのが珍しいぐらいほとんど寝ていました。猫が寝ている姿を見るとほっこりした気分になった記憶があります。

 

 

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