
Vol.11 犬のご褒美とは何かを考えるー犬と人と-共に生きる
犬を飼い始め、しつけは必要だと思うけど、どんな方法で行うべきか悩まれている方も多いのではないでしょうか?
世の中には様々な方法がありますが、以前の連載でもお伝えしたように、まず大前提として動物福祉の側面を考えなければいけません。つまり、肉体的な苦痛や過度に恐怖、不安を与えるような方法は絶対に避けられるべきなのです。
そして何よりも、我が子のようにかわいがっている愛犬を何でもかんでも叱りつけて教えるよりは、互いに楽しみながら必要なことを身に着けていく方法を皆さん選択したいのではないでしょうか?
上記を考慮し、近年ではその一つの手法として犬の望ましい行動をほめ、犬が喜んで行動するように促す、いわゆる「陽性強化法」という方法が用いられることが増えてきました(ただし「ほめる」と「叱らない」は同義ではありません)。
陽性強化法では「動物が何か行動をした時、その行動の最中もしくは直後に良い結果が与えられるとその行動の頻度が増加する」という「正の強化」とよばれる動物行動学の原理に基づいた方法をメインに用います。
良い結果=オヤツをあげることだけではない
陽性強化法はよく、「オヤツを用いたしつけ」などと紹介されることがあります。
もちろん、多くの犬にとってオヤツは好きなものであるため、この表現は間違いではありません。ただし、犬にとって良い結果はオヤツをもらうことだけではありません。
動物は生まれつき持つ正常な行動(習性)を表現することで、本能的欲求が満たされます。これは犬も例外ではなく、様々な本能的欲求を持っています。
例えば、オヤツは生きるために必要な摂食行動という犬の本能的欲求を満たすことができるため「良い結果」となるのです。その他にも、以前のコラムでもお伝えしたように体を休める休息行動や、自分の周囲を確認する探索行動なども本能的欲求の一つです。他にも引っ張りっこは遊戯行動、触ったり撫でたりすることは親和行動といった犬の本能的な欲求を満たすことができるため「良い結果」となり得ます。
つまり本来、陽性強化法とはオヤツを使うのではなく、犬の本能的な欲求を満たすことを報酬として用いる方法のことを言います。
人との共生を考慮した報酬としつけ
欲求を満たすことは全て良い結果となり得るため、吠えることや走り回る事、マーキングをすることも当然報酬となってしまいます。
しかし、忘れてはいけないことは「犬は人間と共生している」ということです。
本能の赴くまま生活させれば必ず社会との衝突がおこります。何度も言いますが犬が人社会で生活している以上、人に迷惑をかけないことが大前提です。
本能的欲求を全て受け入れ満たしてやるのではなく、「犬が人社会で受け入れられるような形で本能的な欲求を表現する方法を教育する」しつけが必要になります。そして飼い主は犬に教育を行い、人間社会で受け入れられる形で、犬の本能的欲求を満たす義務があるのです。
逆を言えば迷惑をかけない報酬であれば積極的に使うべきであるといえるでしょう。どうもしつけやトレーニングの手法論は個人の好みが優先され、犬の習性が置き去りにされているケースがあるのではと感じています。
犬の習性の観点や科学的観点に基づいて言えば「オヤツを使わない」とか「引っ張りっこをしない」などというのは、自ら犬の欲求を満たす術を放棄している為、非常にナンセンスであると言わざるを得ません。
本当に必要なことは、犬が自主的にその場面にあった振る舞いをとれるよう、犬が求めていること(本能的欲求)をよみとり、手法論にとらわれず満たすことと言えるのではないでしょうか?
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