
「外でしか排泄しようとしないんです」匠に聞く・日本犬との向き合い方〜質疑応答編 第2回
「匠に聞く・日本犬との向き合い方」に寄せられた飼い主さんからのご質問に山下先生がお答えします。
性別:男の子
避妊去勢手術:未
年齢:10歳
質問
成犬になってから外でしか排泄しなくなったのですが これから先、加齢をするにつれて室内で用を足してほしいのですが 何か方法はありますか?
【匠からのアドバイス】
日本犬は俗に「尻癖がいい」と言われ,若犬以上になれば飼育場所を汚さなくなるので,昔は「トイレのしつけがいらない」と重宝されました。
しかし,室内飼いのご家庭が多くなってきた現在,逆にこれが問題になることもあります。
子犬のうちは排泄の間隔が短く,また,尿意・便意をもよおしたら我慢できないので,室内飼いの場合には部屋を汚すこともあります。しかし,きちんと教えればすぐにトイレで排泄することを覚えてくれます。
さて,これで「トイレは覚えた」と安心していると,間もなく,散歩に出た時しかしなくなります。
しかし,それが後々問題になるとはほとんどの飼い主さんは気付きません。長時間犬だけで留守番させる時や,年齢を重ねて介護が必要になった時,あるいはそれが予想されるようになった時に,あらためて「室内トイレを使わせるようにしたいのですが」というご相談になります。
外に出た時だけ排泄するのが習慣になっている日本犬の場合,たとえばサークルにトイレを入れて閉じ込めて「オシッコしなければ開けない」と根比べをすると,十数時間(時によっては24時間以上も)我慢してしまうことがあります。
絶対にしたくないのに,生理的な限界がやって来てやむにやまれずそこでしてしまう,という状態です。
自分のこととして考えてみてください。
もし,出張先のホテルでベッドの足元にしびんが備えてあったとしても,歩ける限りはトイレに行くと思います。しかし,部屋には鍵がかかっていてトイレに行けないとすれば,できる限りは我慢するでしょう。そして,もはや我慢の限界,ということになったら,やむなくしびんを使うしかありません。
成犬になった日本犬たちはこれと同じ感覚なのだろうと思います。このようなトレーニング(排泄するまで閉じ込めておく)を試みて膀胱炎にさせてしまう事例が多々あります。
こうならないようにするには,子犬がトイレトレーで排泄することを覚えたら,それで安心してしまわず,毎日トイレをごくわずかずつ寝床から遠ざけ,最終的には,玄関土間やベランダなど,寝床やくつろぐ場所とは少し意識が変わるところに置くようにしてください。無理なく進めれば成犬になってもずっとそれを使い続けてくれます。
ご相談の事例はすでに10年も外でしか排泄していないわけですから,このトレーニングは不可能ですね。
まだ足腰はしっかりしているでしょうから,リードをつけて外に出たら,家のすぐ外のごく狭い範囲で行ったり来たりを繰り返してください。
最初はなかなか排泄しないと思いますが,室内とは違って「寝床」という意識ではないので,オシッコが溜まっている場合には数分以内には排泄すると思います。排泄の姿勢を取ったら小声でほめ始めて,やり終わったらしっかりほめてオヤツのご褒美。
それから本格的に歩き出してください。
きれい好きな犬にとって,長年身についた排泄習慣を変えさせるのは容易ではありません。
室内トイレを使わせたい,という人間側の要望と,家から離れてから排泄したい,という犬の要望の中間を目標に設定して,今からトレーニングを始めてください。
軽井沢ドッグビヘイビア 獣医師 山下國廣
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