わたしは犬や猫の保護活動をしています。

 

2016年8月、普段お世話になっている獣医から電話がありました。

 

獣医から電話がかかってくるときは、たいてい良くないことが起こったときですがこの時は入院している子もおらず、少し不思議に思いながら電話に出ました。

 

すると、「高速道路に捨てられていた子猫を保護してくれないか」とのこと。

 

正直、その時もすでに子猫をたくさん保護している状態で余力はなかったのですが、発見者は東京からの旅行者で、子猫は衰弱しているということだったので引き受けることに。

 

病院に到着すると小さい小さい子猫が眠っていました。

 


子猫は推定生後2か月。
炎天下の三陸道に捨てられていたところを、東京から来た旅行者の方に救われたのです。

 

何台も何台も車は子猫の横を通り過ぎたそうです。

 

私も子猫のために停まる車は見たことがない。
旅行中だったにもかかわらず、見捨てずに助けてくれたことに心から感謝します。

 

「生きている」と思った旅行者の方は、車を停め熱いアスファルトの上から子猫を救い上げました。

 

子猫はかなり衰弱していてやっと少し動いている状態。

 

旅行者の方は高速道路を降りて、動物病院を検索して連れてきてくれたのです。

 

炎天下のアスファルトの上はやけどするくらいの熱さ。
小さい子猫にとっては命取りです。

 

子猫は低血糖、脱水症状に陥り危険な状態だったのですが、病院の応急措置で命を取り留めました。

 

恐縮される旅行者の方から子猫を引き継いだのですが、私が子猫を抱き上げたり撫でなでたりしても、待合室の隣で犬が大騒ぎしていてもまったく目を覚まさない。

 

少し心配になったのですが、輸液後に自分で缶詰を食べることができたそうで、すっかり疲れ切り、安心できる場所であることが分かっていろんなものが切れた状態だったかもしれません。

 

そのくらい子猫は、頑張ったのでしょう。

 

そして怖かったのでしょう。

足が麻痺して歩けない

子猫の名前はメイ。

 

保護主さんがつけてくれた名前です。

 

連れ帰って5時間以上たっても目を覚ましませんでしたが、さすがに何か口に入れさせたほうがいいので起こし、体が弱っている子のための缶詰をあげると少しずつですが食べてくれました。

 

目が覚めてみて、知らない場所だったから戸惑ったかもしれませんが、自分の口で食べてくれたことに一安心。

 

 

さて、脱水症状なども改善されて落ち着いたかに見えたメイですが、なぜかまったく動こうとしません。

 

生後2か月の子猫は動き回るのが普通。
座ることもできない様子なのです。

 

メイの様子を観察すると左側の前足と後ろ足、それに尻尾も動かせないようです。
だから座ることもできなかったのです。

 

病院で検査すると、骨折などではありませんでした。
検査で極度の栄養不足により骨膜が異常に薄いことが判明。

 

猫まんまのような食事だとこのような状態になるとのこと。
この子は人に飼われていたようなのですが、満足に食事も与えてくれなかったのかもしれません。

 

しかし、床ずれなどができているわけでもないのでずっと麻痺していたわけではないようです。

 

 

メイは頭にけがをしていました。
投げ捨てられて、左半身か頭を強打したことによる麻痺かもしれないということになりました。

 

子猫なので栄養をたくさん取って成長することで改善するかもしれないとのことで、脳と体の活性化のために毎日酸素室に入れてもらうことに。
そしてご飯も4時間おきにあげました。

 

歩けるようになるも尻尾がミイラ化

 

このまま歩けなかったらと心配していましたが、2日後に足が動くようになったのです!
完全ではありませんが短い距離も歩けるようになりました。

 

 

しかし一安心もつかの間、新たな問題が。
メイは尻尾も動くようにはなりましたが先端が折り曲がったまま 動かないのです。

 

通常、子猫は尻尾をぴんと立てて歩きます。
調べて分かったことは、尻尾の先の骨が数個分ミイラ化しているとのこと。

 

 

車に踏まれるなどして、先端の組織が死んでしまったようなのです。

 

「最終的には断尾しなければならない」ということでしたが、その時点ではまだ麻酔などの処置は無理。
様子を見ることに。

 

メイは日に日に元気になり、ほかの子猫たちと取っ組み合いをして遊ぶまでになりました。
尻尾の先端はミイラ化してしまって干からびた状態でしたが、麻痺も残らず子猫らしく活発に。

 

 

あとはもう少し成長したらミイラ化部分を断尾できれば問題なしと思っていた矢先、想定外の事態が!

 

なんだか違和感を感じると思ってメイを見ると、ミイラ化したしっぽがありません!
慌てて確認すると尻尾があった部分は白いものが見え、血もついています。

 

どうやら自分でちぎってしまったらしい…。
時々猫はけがをした部分を自分で噛み千切ることがあるのだとか。

 

 

しばらく見当たらなかった尻尾はのちに、メイちゃんが遊んでいるところで発見。
自分で噛み千切った尻尾で遊ぶとは…大物。

 

ちぎれ方がよくないのでやはり断尾は必要と言われたのですが、のちに奇跡の回復を果たすのです。

 

ちぎれた場所は肉が盛り上がり骨を覆い隠して、ちゃんと毛も生えてきました。

 

先端はやはりうまく動かせないらしく、ぴんと立てても先のほうが折り曲がってしまうのですが、生活になにも支障はありません。
生命力の強い子です。

 

 

メイは健康状態も問題なく、避妊手術も無事に完了。
あとはメイを受け入れてくれる里親さんとの出会いを待つだけです。

 

 

里親さんとの出会い

そして2017年2月、素晴らしい里親さんからついにお申し込みが!

 

少し怖がりだから里親さんのうちに慣れるのに時間がかかるかなと思っていたましたが、兄弟のように育った子猫のエルと一緒のおうちに行くことなったのです。

 

エルは保護したママ猫が私のうちで産んだ子です。

 

さすが、強運の持ち主、メイちゃん。

 

 

里親さんは息子さんがお祭りでとってきた亀さんを20年も大事に飼い、先住犬を最後までお世話して看取ったご夫婦。

 

安心してお任せすることができました。

 

エルと一緒のおうちに行くことができたメイちゃんは、里親さんのおうちにすぐ慣れることができました。

 

 

いつも2匹で仲良く猫団子しているようです。

 

 

メイは生まれた時から過酷な境遇だったことが考えられます。
栄養失調だったし、高速道路に捨てられました。

 

ほかの兄弟は死んでしまった可能性も高い。
そんな中、メイは私のところまでたどり着いた強運と生きる力の持ち主。

 

きっと素晴らしい里親さんと出会える、そう信じて里親さんを募集しました。
幸せをつかんだメイの姿は本当に心から嬉しいものでした。

 

今でも記事を書いていて当時のことをまざまざと思い出します。
2匹ともに幸せになってくれたこと、これが唯一にして最大の報酬です。

 

関連カテゴリ:感動

 

(Visited 1,116 times, 1 visits today)

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

関連記事

二本足の子猫キャシディ | 飼い主の愛で幸せをつかむ

いつ腰フリフリする?犬のマウンティングー甲斐犬ジュウザのびっくり事件簿

「タラレバ」にならない老犬介護/犬の老いじたく③食事編

“こののら猫と出会えたのは、きっと運命……” 猫と人が織りなす感動の物語

「タラレバ」にならない老犬介護/犬の老いじたく④住まい編