動物園よりも身近に「野生」を感じるサファリパーク。その数は全国に10施設ほどしかありません。今回は“天空のサバンナ”と呼ばれる「岩手サファリパーク」をご紹介します。標高200mの丘陵地に広がる動物たちの楽園は、探求心を十分に満たしてくれます。では冒険に出発しましょう!

 

 

 

岩手サファリパーク・ヒストリー

岩手サファリパーク ゾウさんライド
岩手サファリパークは、岩手県一関市(開設当時は岩手県東磐井郡藤沢町)にある北東北唯一のサファリパークです。最初は同県の花泉町への建設を検討していましたが、用意された土地が狭かったことから他の候補地を探していたところ、初代の東北サファリパークの社長が、藤沢町館が森高原に理想の地を発見しました。

 

その土地は藤沢町内で進められた国営農地開発事業のための造成地でした。しかし未利用地だったため、当時の社長は「一目ぼれ」のようにサファリパーク建設の候補として熱望。

 

その後、藤沢町の協力を得て地域住民への説明が進められ、わずか1年半後の2008年4月に「岩手サファリパーク」がオープンしたのです。

 

 

主な動物・見どころ

岩手サファリパークのバス
標高200mの丘陵地にあるため、「天空のサバンナ」がキャッチフレーズです。この地域は東北の中では気候が温暖で雪も少なくサファリパークを開設するには最適です。

 

園内には50種500頭(羽)の動物たちが放たれ、バスで60分ほどかけて冒険をします。
以前は自家用車で入園することができたそうですが、動物たちによって車を破損させられるトラブルが多いことから、現在は専用バスのみとなっています。

 

 

ゾウの村の醍醐味

岩手サファリパーク ゾウの村
チケットを買って園内に入ると「ゾウの村」に迎えられます。
動物園での繁殖と海外からの輸入がむずかしいことから、全国の動物園からゾウが姿を消していっています。ここ10年で7つの動物園からゾウがいなくなり、50年後には現在の5分の1程度になると予測されるほど深刻な状態にあるのです。「ゾウの村」は、そんな希少なゾウがたくさん飼育されています。

 

ゾウの村の醍醐味は3つあります。ひとつ目は「ゾウに触れることができる!」

 

岩手サファリパーク ゾウの村
ゾウの皮膚はとても硬くゴツゴツとしていますが、優しい目をしているので、恐怖心はまったく感じません。

 

ゾウの村の醍醐味2つ目は「ショーを見ることができる!」

 

岩手サファリパーク ゾウの村
昭和30年代くらいまでは一般の動物園でもショーを行っていましたが、現在は種の保存や保護、研究が主な飼育目的のため、ショーを行っている動物園はほとんどありません。

 

ゾウの村では土日・祝日限定で輪投げやバスケットボールなどのショーを実施。ゾウのポテンシャルの高さを知ることができます。

 

ゾウの村の醍醐味3つ目は「ゾウの背中に乗れる!」

 

岩手サファリパーク ゾウさんライド
広い背中に乗って広場内を一周することができます。「ゾウさんライド」の料金は有料ですが、こんな機会はめったにありません。ノッシ、ノッシと歩く揺れに身を任せてみてください。

 

 

“サファリ”なのにトラからスタートする肉食動物ゾーン

岩手サファリパーク トラ
さあ、冒険を開始しましょう。重々しいゲートが開くと、バスはサファリパークへと侵入していきます。
まずは「ベンガルトラ」と「ホワイトタイガー」のお出ましです。

 

ベンガルトラはインドやネパール、バングラデシュに生息、ホワイトタイガーはベンガルトラの白変種です。世界で30頭程度しか捕獲されていないといわれる希少種ですので、一見の価値があります。

 

しかし「サファリ」ってアフリカ大陸を移動しながら野生動物を見ることなのに、なぜそこにインドやネパールにいるトラが…この辺は深く考えないで楽しみましょう。

 

バスをも破壊する迫力の肉食動物

岩手サファリパーク ライオン
岩手サファリパークにいる肉食獣は、ライオン、トラ、チーター、ヒョウ、ピューマですが、近くに寄ってくることは少なく、遠くから動物たちを見ることになります。

 

もっとも、近づかれるのも困りもの。自家用車の乗り入れが禁止されていないときは、猛獣たちに車体を傷つけられる、ミラーを壊される、パンクをさせられるということが多かったそうで、バスの運転手さんは土地の訛りで「このバスも何度もパンクさせられているんだよ」と教えてくれました。

 

動物たちに占拠される!触れ合いの草食動物ゾーン

岩手サファリパーク バーバリーシープ
草食動物ゾーンに入ると、窓を開けることが許されます。バスが停車すると、たちまちたくさんの動物たちが集まってきました。このバーバリーシープは羊の原型と言われています。

 

バケツ1杯1000円!

岩手サファリパーク
ここからがサファリパークの稼ぎ時。
車内では動物たちの餌がバケツ1杯1000円で販売されています。

 

子供たちは「お父さん、動物に餌をあげたい」と無邪気なもの。「1000円は高いなぁ」と思いながらも、子供のために餌を買う父親の哀愁。普段は牛丼チェーンで昼食代を安く済ませているのに、動物たちは遠慮なく、その倍以上もする餌をムシャムシャと頬張るのです。

 

でも考えてみるとパークではこれだけの動物を飼育しているのですから、ちょっとした貢献と考えて楽しんでみましょう。

 

キリンがバスを訪問

岩手サファリパーク キリン
キリンが長い首を窓に突っ込んで餌をねだってきました。こんな体験はサファリパーク以外ではできません。

 

キリンには「ミナミキリン」「マサイキリン」「アミメキリン」「キタキリン」の4種がありますが、バスに乗り込んできたのは、動物園でもよく見かけるアミメキリンです。野生のアミメキリンは8700頭以下と言われ、絶滅の危機に瀕しています。
「かわいい」「すごい」と驚いた後には、そうした事実にも目を向けてみてください。

 

バッファローではありません。アメリカンバイソンです。

岩手サファリパーク アメリカンバイソン
「おい、飯はまだかー?」と、アメリカンバイソンがやってきました。
体長はオスで3mから3m80㎝、メスで2mから3m以上もある大型のウシ科の動物です。
バッファローと間違えられますが、別種になります。毛皮や狩猟目的の乱獲により19世紀末には数百頭にまで激減しましたが、近年は少しずつ回復しています。

 

動物と遊べる広場

岩手サファリパーク 広場
ふれあい広場には、ワオキツネザルとエリマキキツネザル、カピバラなどがいます。
どのサルも同じように見えて、飼育員さんには見分けがついているのだとか。

 

抱っこをしたり、肩に乗せたり存分に楽しむことができますが、好奇心旺盛なのでカメラを奪い取って行ったり、リュックなどのジッパーを開けて物を持って行ったりするので注意してください。

 

岩手旅行にはぜひ組み込みこんでほしいサファリパーク

岩手サファリパーク カピバラ
広大な敷地を悠々と歩く動物たち。思い切り動物たちの躍動感を味わうことができました。
サファリパークは、動物園とは異なる魅力に溢れています。岩手県は震災から復興し、新たな時代を切り開こうとしています。近隣には世界遺産にもなった平泉や川下りが楽しい猊鼻渓もあります。
ぜひ、岩手観光の中に岩手サファリパークも組み込んでみてください。

 

関連カテゴリ:動物園

 

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