携帯電話のCMのお父さん役で一躍有名になった「北海道犬」ですが、希少種のため実物を見たことがある人は少ないことでしょう。

 

北海道犬とはどんな犬種なのか、柴犬などの日本犬とはどう違うのか。親子二代に渡り北海道犬を飼い続けている「マキドッグスクール」代表・牧宏美さんに、北海道犬の知られざる実態をお伺いしました。

 
 

北海道犬(アイヌ犬)とは

「アイヌ犬」の別称があるとおり、古くからアイヌ民族の狩猟犬として飼われていました。

 

臭いを嗅ぎ取られる風下を避けて背後から獲物を狙う、アキレス腱など相手の急所を狙って攻撃するなど、狩猟犬としても優秀なうえに、ヒグマにさえ立ち向かっていく勇気もあります。
そのためアイヌの人たちは、餌として栄養価の高い獣の内臓を与えるなど、とても大切にしていました。

 

北海道犬(アイヌ犬)

 

1937(昭和12)年に天然記念物に指定され、北海道犬に改称します。
展覧会などを目的とした愛好家に好まれていましたが、CMで話題となり、家庭犬としても飼われるようになりました。

 

一時はブームに乗って1000頭余りの登録があったものの、現在の登録数は数百頭ほどとなっています。

 

2007年から現在まで、携帯電話のCMに北海道犬が起用されて一躍有名に。
撮影直前まで父親役の俳優が決まらなかったため、CMプランナーの思い付きで決定したそうです。白い犬は日本人に好まれますし、北海道犬はよく吠える(話す)ため、アフレコが入れやすかったことも起用理由のひとつかもしれませんね。

 

北海道犬(アイヌ犬)のルーツ、歴史

北海道犬は、縄文時代にアイヌ民族と共に移動して北海道にやって来たと考えられています。

 

しかしアイヌ民族自体がどこからやって来たのか解明されていないため、北海道犬のルーツも謎のまま。
弥生時代に中国大陸からやって来たと考えられている柴犬、紀州犬、秋田犬などと異なり、同じく縄文時代にやって来たと考えられる琉球犬との相関が見られます。

 

北海道犬(アイヌ犬)の特徴

 

北海道犬の舌

 

アイヌ民族は、道内のあちこちに「コタン」と呼ばれる集落を形成していました。
厚真系はトラ毛、平取系はゴマなど、コタンごとに毛並みの特徴が異なっていましたが、展覧会出展するために交配が行われ、純血種はわずかに千歳系に残すのみとなっています。

 

また日本犬である柴犬に似ていますが、よく見るとこんなに違いがあります。

 

  • 耳が小さくピンと立っている
  • 目が小さい
  • 体毛の量が多い
  • 北海道犬の方が大きい

 

一番大きな違いはです。北海道犬の舌にのみ「舌斑点」という斑点がるので、一発で見抜くことができます。

 

北海道犬(アイヌ犬)の性格

飼い主には絶対服従、他人にはなつきにくい性格です。
離れた飼い主を探して何十㎞も臭いを追ってくる忠誠心がある一方、担当者が変わると全く懐かないため、軍用犬にするのを諦めたというエピソードがあります。

 

北海道犬(アイヌ犬)の飼い方

 

北海道犬

 

「なつかない」「よく吠える」など、北海道犬には扱いにくいイメージがあります。
野性味が強いため、トイプードルなどと比べると飼いにくいのは確かですが、子犬の頃からコミュニケーションを取ることで、一般犬として飼うことは可能です。

 

北海道犬(アイヌ犬)を飼う上での注意点

もともと猟犬なので、自分より大きな犬には闘争心を出します。
散歩などですれ違った際に一触即発とならないよう、子犬の頃からドッグランなどに連れて行き、多くの犬や人と触れ合って社会性を身に着けることが大切です。

 

感染などの心配から生後4か月目までは他の犬と触れ合うことはできませんが、抱っこをして積極的に外出してください。人に撫でてもらうと人間への恐怖心が薄れていきます。

 

飼育環境

飼育環境は他の中型犬と変わりません。昔のように犬小屋を作って屋外で飼っている人は少なく、他の犬同様に室内で飼われることが多いようです。「外に繋いで飼うよりも、ケージなどで飼う方が目つきは優しくなる」と牧さんは言います。

 

猟性が強いため、長野県ではニホンザルによる野荒らしから畑を守る「モンキードッグ」として導入されています。
また、九州の山伏と一緒に暮らしている北海道犬は、イノシシを仕留める活躍ぶり。
本来の能力に適した飼われ方をされています。

 

北海道犬(アイヌ犬)のしつけ

 

北海道犬

 

小さいころからドッグスクールで他の人や犬と交流させて、性格を穏やかにすることが必須となります。ある程度成長した北海道犬をしつけるのは不可能に近く、受け入れてくれるスクールが限られます(実質的にはゼロかもしれません)。

 

ペットホテルについても同様です。子犬のころからドッグスクールやペットホテルと関係性を築くことが、飼い主にとっても犬にとっても最良と言えるでしょう。

 

日ごろのケア

北海道犬のケアはブラッシングする程度でよく、特別なことは必要ありません。

 

北海道犬は飼い主以外に慣れない性格ですが、人の目を気にして早朝や夜間に散歩をしては、人との交流を持つことができません。散歩は犬にとって運動だけではなく、社会性を学ぶ機会でもあります。なるべく散歩は日中に行ってください。

 

北海道犬がかかりやすい病気

北海道犬だからかかるという病気は特になく、他の犬同様、食べ物や運動量などに注意すれば、平均15年は生きることができます。北国の犬なので暑さに弱いところはありますが、炎天下でなければ問題ないでしょう。

 

北海道犬が絶える日は近い?

牧さんによると、全国で飼われている北海道犬の数は500頭以下ではないかと言います。
CMによるブームの終焉、中型犬が敬遠される、飼育が難しいなどの理由により、繁殖しても売れない、売るルートがないないなど、北海道犬を取り巻く環境は厳しくなっています。

 

今のうちに絶滅危惧種として保護するなど手を打たなければ、絶滅してしまう日は近いかもしれません。

 

【取材協力】
マキドッグスクール
〒005-0832 北海道札幌市南区北ノ沢1753
TEL:011-571-2126
http://www.maki-dog.com/index.html

 

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