
歩くガイコツと言われる程やせ細った犬が起こした奇跡
骸骨のような犬が保護される
パッチはロンドン北の郊外で飼い主に捨てられてしまっていたところを動物愛護団体RSPCAに保護された犬です。
「パッチは驚くほど痩せていました。頭蓋骨を含むすべての骨が浮き出ている状態でした。
パッチの体重は標準の半分ほどしかありませんでした。
彼は歩く骨格のようで体重は9.8㎏しかなく、この品種の成犬の半分の体重でした」とパッチを診察した獣医は話しています。
パッチを保護したスタッフは「ウォーキング・スケルトン(歩く骸骨)」のようだったと当時の様子を説明しています。
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犬を餓死させた飼い主
SPCAの捜査官のレイチェル・ヘイワードさんは、パッチを捨てた飼い主を追跡したのですが(イギリスでは犬にマイクロチップを装着することが義務付けられています)、それにより重大な犯罪が判明したのです。
パッチを飼っていたのはダニエル・ロジャース(19歳)とキリー・スコット(19歳)で、パッチのほかにも犬を飼っていたことが分かりました。
そしてなんとその犬、ルルをビニール袋に入れて公園に遺棄したことを認めたのです。
発見されたルルはパッチ以上にやせて、本当に骨と皮ばかりにされて捨てられていました。
「私たちがパッチの飼い主と話をしたとき、彼らは2匹目の犬を死なせてビニール袋に入れて公園に遺棄したことを認めました。
ルルの体が回収され、餓死したことが判明したのです。2匹の犬は歩く骸骨のような状態だったのに、飼い主たちはただ座って何もしなかったのです。
彼らは犬たちをアパートに閉じ込め、ほかからは見えないようにしてゆっくりと死んでいくのを眺めていたのです」
目の前にいる自分の飼い犬が飢えて弱っていく姿を平気で見ていることができるなど、いったいどういう神経の持ち主なのかと心底軽蔑します。
食べることはすべての生物の生きるための本能であり、どんなに苦しかったでしょう。
餓死は死に至るまでには長い時間がかかります。
どんなにつらい日々を過ごしたでしょうか。
動物虐待で有罪判決
餓死させるくらいなら所有権放棄をし、保護施設に遺棄すればよかった。
でもこういう人間は、自分たちは最低の人間であるにもかかわらず体裁を気にするのです。
犬の命より自分の見栄のほうが大事だったのです。
ダニエルとキリーの2人はSPCAに告発され、2017年9月にウースター裁判所に出頭しました。
2人は2頭の犬に苦しみを与えた動物福祉法第4条に違反した2つの罪に問われ、有罪判決を受けています。
2人は動物飼育に不適格と判断され今後ペットを飼育することはできなくなりました。
また、30日間のリハビリと12カ月の地域奉仕を命じられています。
犬を餓死させておいて、たったこれだけの罪とは軽すぎる気もします。
過酷な苦しみを与えて死に至らしめたのですから、その罪に相応の罰をとも思います。
その点は日本と大差ないように感じますが、大きく違うのはこの2人が今後ペットを飼うことができないということです。
イギリスでは18歳で成人なので実名報道されていますし、「私は動物を飼ってはいけない人間です」と自身に表示されるわけではありませんが、動物愛護に関心が高い国なので違反があれば通報される可能性は高いでしょう。
悪をはびこらせるのは、「良い人が何もしないこと」だとも言われます。
動物虐待をする人はほぼ100%同じことを繰り返します。
動物虐待に対してはもっと厳罰化するとともに、日本でも「二度と動物を飼ってはいけない」と禁止することも虐待される動物を増やさないためには必要なことと思います。
パッチの命を救うための懸命のケア
何とか餓死する寸前で助けられたパッチ。
SPCAのスタッフたちはパッチを健康体に戻そうと努力するのですが、パッチがやせているのにはもう一つの理由があることが分かりました。
パッチは「巨大食道症」という症状であることが分かりました。
巨大食道症とは食道が拡張し食べ物を異にうまく送り込めず、さらには食べた後にすぐに吐いてしまうという症状です。
犬の生命にかかわる病気ですが、対処法や治療法がないわけではありません。
しかし、飼い犬を餓死させるような飼い主ですから獣医師に診せることもしなかったでしょう。
まずはパッチの体力を元に戻すために、スタッフは24時間付きっきりで看病しました。
「悲しいことに、かわいそうなルルを助けることはできませんでした。しかし、パッチにはまだチャンスがあり、私たちは彼の健康を取り戻すことを決めたのです」
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食べ物をうまく口に入れ、吐き出さないようにするには犬を立たせた状態で流動食を食べさせる必要があるので、パッチ専用の口から胃までをまっすぐに保つことができる特性の椅子を作りました。
そのおかげでパッチは徐々に体重が増えて16㎏になり、健康状態も回復しました。
パッチの症状を理解し、ちゃんとケアしてくれる家族であれば譲渡できるほどになったのです。
それでも障害があるパッチの全てを受け入れてくれる人が現れるかどうかスタッフは心配していました。
里親さんのもとで奇跡的な回復
しかし間もなく、パッチの里親になりたいと言ってくれる女性が現れたのです。
偶然にも亡くなったパッチの姉妹と同じ名前を持つルル・ジェンキンスさんです。
ルルさんは、出会ってすぐにパッチは自分の家族であると直感したそうです。
ルルさんはある意味動物のエキスパート。
6匹の保護犬の里親になり、ロバ、アルパカなどほかにも多くの動物たちと暮らしているのです。
これまでもあらゆることに対処してきたルルさん。
そのため、パッチが特別な椅子で食事をしなくてもよくなるまで待つことなく、自分で面倒を見ることにしたのです。
ルルさんと暮らし始めたパッチは奇跡的な回復を見せます。
「パッチは今では普通に食べ物を噛んで食べることができます。彼は庭でガチョウを追いかけるのが好きです。私たちは彼のキャラクターを愛しています」と回復後のパッチの様子を語るルルさん。
パッチはほかの動物たちともうまくやっていて、幸せに暮らしているようです。
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SPCAの副管理者であるモナ・ジョルゲンセンさんは
「パッチには彼が病気にならないように適切に給餌し、ケアしてあげることができる飼い主が必要でした。ルルはパッチに必要なケアをしてあげることができるとわかりました。パッチの回復は驚くべき奇跡です。私たちは彼が幸せにたどり着くことができ、健康になったことをうれしく思っています。彼は本当に幸運な犬です」
と話しています。
パッチは理想的な体形となり、元気を取り戻し、表情は生き生きとしていますね。
巨大食道症はかなりの世話が必要で、その世話を放棄した飼い主から犬を保護したことがあります。
残念ながら、もと飼い主が世話を放棄していたことが原因でその子は亡くなってしまったのですが、それを考えるとパッチがここまで目覚ましい回復を見せたことは驚嘆しますし、それを成し遂げたルルさんの献身には感服します。
亡くなったルルの分までパッチには幸せになって欲しいと思います。
出典:EXPRESS
出典:the dodo
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