
旅行中に出会った殺処分目前の犬〜旅行をキャンセルして里親に
旅行の最中に目にした無残な犬の姿
シェリダン・ピラードさんとブライアン・ソレス・ピラードさん夫妻はアメリカ イリノイ州オズヴィーゴで動物愛護団体Thorse Dog Rescue を運営しています。
2人は休暇をフロリダで過ごすことにしていました。
そしてディズニーワールドに行くことを楽しみにしていたシェリダンさんとブライアンさん。
しかしそれは、ある緊急事態によって中止を余儀なくされるのです。
2人が旅行先のフロリダで休暇を楽しんでいる最中に、フロリダの保健所に収容されている1匹の犬の様子を伝えるインターネットサイトを見てしまったのです。
それはやせ細り、無残な姿をした1匹の老犬。
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「その犬は本当にやせ衰えた姿をしており、きちんとした世話が必要なことは明らかでした。その犬は私たちが休暇を過ごしている場所から2~3時間ほどの場所にいて、私たちは見に行くことにしたのです。」
その犬はフロリダの路上をさまよっているところを保護された高齢犬で、余命は幾ばくも無いと思われました。
フロリダの殺処分ありの保健所に収容された犬は推定15歳。
しかも健康状態が大変悪く、里親募集のフロアではなく別なところに収容されていました。
つまり殺処分対象ということです。
救う決心をする
シェリダンさんとブライアンが保健所に到着して犬の姿を見たとき、この犬を助けられるのは自分たちだけであり、この犬が命をつなぐ最後のチャンスだということは明白でした。
しかし簡単には決心できなかった2人。
「犬のほとんどの毛は抜け落ちていて、通常の半分ほどの体重しかない状態でした。しかも、盲目で広範囲に皮膚感染症がみられ、緑内障もあり、それらすべてが今まで治療もせずに放置されてきたことが明らかでした。夫は私に彼を見てと言いました。終わりの見えない治療、眠れない夜、犬を助けるためにそれらの努力を払っても結局は死に向かうだけ。私はこれらのことをすでに別の犬で経験済みで、もう一度トライするのに疲れていました」
と当時の気持ちを語るシェリダンさん。
2人は休暇を楽しむためにフロリダに来たのであって、保護犬を見つけに来たわけではなかったのですから。
しかし、実際にその気の毒な犬と触れ合った瞬間に心は決まりました。
「私はその犬の世話をするのはあまりにも精神的な負担が大きいように思いました。でも、自分のことを考えるのではなく、その犬のことを考えてみたのです。彼がたった一人で苦しみの中にいること、自分がどこにいるかさえ見ることができないことを」
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シェリダンさんが床に座ると犬は寄ってきてしっぽを振り、シェリダンさんの肩に前足をかけて顔をなめました。
その犬のひどい様子から、飼い主からは全く大切にされず満足な世話もされずに捨てられたことは明らかですが、それでも彼は希望も愛情も失ってはいなかったのです。
このような犬の様子を見ると、犬のほうが人間よりもはるかに豊かな愛情を持ち、純粋な心を持ち続ける精神が優れているのではないかと思わされます。
いかに年を取り病気だったとしてもちゃんと世話をされていればここまでひどくなりはしないでしょう。
また、まともに心がある人なら目が見えない犬を通りに放り出したりしないでしょう。
この子を捨てた飼い主よりも、こんなことをした人間を恨むことなく愛情を持ち続ける犬のほうがよほど優れている生き物なのではと思わざるを得ません。
「彼はくさくて、きたない顔を私に擦り付けました。彼が私のそばに横になると笑い声が出てしまいました。その日、彼は Thorse Dog Rescueの一員となり、私の家族となったのです」
余命数日と診断される
シェリダンさんとブライアンさんは犬をグッピーと名付け、家に帰るとすぐに獣医に連れて行きました。
診察した獣医師は、高齢なうえにあまりにも多くの疾患を抱えていたグッピーはもはや数日の命だと診断しましたが、シェリダンさん達はあきらめませんでした。
その後、緑内障だったグッピーの目を取り除く手術が行われ、皮膚疾患の治療のために薬湯への入浴も始まりました。
グッピーの症状はあまりに進行していたため、回復にはとても多くの時間と手間がかかりました。
「薬用バスに入らせ、エプソムソルトを使用し、アップルサイダーのシャンプーを行いました。それからココナッツオイルやビタミE、アップルサイダービネガー入りの手作りクリームを塗ってあげました。グッピーはそれでも自分で足を噛んでしまうので毛糸の靴下を履かせ、柔らかいカラーを付けてあげていました」
と治療の様子を語るシェリダンさん。
エプソムソルトやアップルサイダーは皮膚疾患に効果があるとされています。
皮膚疾患はほぼ毎日のシャンプーや薬の塗布などが必要であり、重症の場合は完治にかなり時間がかかってしまいます。
しかし、手間暇をかけてグッピーの世話を続けたシェリダンさん。
そのおかげで見違えるほど回復したグッピーです。
とても同じ犬とは思えません。
人間の愛情の有無によって、ここまで犬の状況を変えてしまうことをグッピーが体現しています。
本当の家族のもとで健康を取り戻す
グッピーは病気があるだけでなく、自分からご飯を食べることができなかったり、ちゃんとトイレもできなかったりとたくさんの世話が必要でしたがシェリダンさんたちは決して投げ出しませんでした。
どんなことがあっても自分を愛してくれるシェリダンさんにグッピーはすっかり頼り切っているそうです。
「私たちが寝ているときにグッピーは泣き声をあげるときがあります。私たちは彼のところに行き、何が必要か考えるのです」
とてもゆっくりではありましたが健康を回復し生きる強さも取り戻したグッピー。
1か月後には皮膚感染はすっかり完治し、毛が生えてきて、自分で食事を摂る元気も出てきました。
「グッピーは介護状態から自分で食事を摂ったり、排泄ができる状態にまでなりました。老犬なので寝ている時間が長いですが、目を覚ますと私たちに挨拶してくれます」
1年後の元気なグッピーの姿
グッピーがフロリダの施設から保護されて1年後、すっかり元気になり犬生を楽しむ姿が見られるようになりました。
眠るのが大好きなので部屋ごとにグッピーのベッドが用意してあるのだそうです。
「彼はあきらめてはいけないことを私に思い出させてくれます。あんな暗黒の時間の中にいてさえも彼は、本当の愛してくれる家族を見つけることをあきらめてはいませんでした」
グッピーの姿は彼を保護したシェリダンさんたちの愛情がなしえた素晴らしい結果と、人間の身勝手さがどれほど犬を苦しめるかを私たちに教えてくれています。
「多くの人々は、死ぬのが嫌だからという理由で老犬の里親になることを望みません。私はそれを理解していますが、彼らを家に連れていくための勇気と強さが心にあることを見つけられるようにと思っています」
とブライアンさんは話しています。
シェリダンさんたちが最初に躊躇したように、老犬であったり健康に問題があったりした場合、かわいそうとは思っても家族に迎える決断をすることは難しいかもしれません。
シェリダンさんもグッピーに会った当初は、苦労しても結局死んでしまうという現実に疲弊していました。
診察した獣医師もグッピーの余命は数日と判断するほどでしたが、結果的にグッピーは1年後も生きていて犬生を楽しんでいます。
もし、獣医が言うように数日で死んでしまったとしても、施設で誰からも顧みられることなく殺処分となるよりずっと幸せな数日を過ごせたはずです。
そして、犬は最後まできっとあきらめません。
グッピーももと飼い主にひどい扱いを受けても人への愛情を失いませんでした。
そんなグッピーに幸せな時間が訪れたことを心から感謝します。
出典
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