前回のコラムで、毎日の動物達とのコミュニケーションの中で飼い主さんの観察する力を身につける事が重要だとお話ししました。
感じ取れる変化は以下の項目のようになります。

  1. 眼で見た変化
  2. 耳・鼻で感じる変化
  3. 手で触れて感じる変化
  4. 動物の行動で感じる変化

そこで今回は、最初の項目:眼で見た変化(顔・頭部)編です。

起きて‘おはよう’と声をかけた時や、何かを期待してこちらに視線を送っている時の表情を観察してみましょう。
どうですか?何か感じましたか?

漠然といわれても困ってしまいますね。そこで見落としを少なくするため全体 から個々の部位にフォーカスしていくことにします。

1.眼で見た変化・顔(頭部)編

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Step1:顔(頭)全体を見る

まずは、表情!いつもと違うと感じるかどうか。感じたならばその違和感がどこからくるのかに注目していきます。

感じなかったというのも1つの情報ですが、ここで注目すべきは、“左右差があるかないか”です。

左右差は一見して違和感(いつもと違う)を感じさせる重要なポイントです。

観察ポイントは以下のようになります。
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  • 頭の傾き
  • 耳や眼の位置や向き
  • 瞬き・眼の動き
  • 口唇や舌動き(舌の出し方)、よだれ
  • 目ヤニ・鼻水などの分泌物の付着
  • 脱毛・腫れ・傷の有無

等を中心に観察します。

Step2:視点を変えて顔を見る

上下左右と視点をかえて観察します。言われれば“なるほど!”と思いますが、やってない事だと思います。正面からだとわかりにくい頬の腫れ、下あごの汚れ等に気づくことが多いです。

Step3:Step1・2で感じた変化を中心に各部位ごとに観察する。

  • 耳(左右ともor片方だけ)
  • 立っている/倒れている
  • 動く/動かない
  • 赤い
  • 汚れている/カサカサしている
  • 毛が抜けている
  • 眼(左右ともor片方だけ)
  • 開いている/閉じている
  • 潤っている/乾いている
  • 赤い/白い
  • 涙・目ヤニ多い
  • 瞬きできている/できない
  • 瞳孔の大きさ
  • 動き方の変化

 

  • 頬(左右ともor片方だけ)
  • 腫れている(特に右図の○丸部分konoko_02
  • 毛が抜けている
  • 鼻(左右ともor片方だけ)
  • 鼻汁出ている
  • 色の変化
  • 皮膚が盛り上がっている
  • 乾燥してひび割れている
  • 口唇(左右ともor片方だけ)
  • 動く/動かない
  • 赤い(特に右図の○丸部分
  • かゆい(特に右図の○丸部分konoko_03
  • 色の変化
  • 口を開く/開かない
  • 唾液の色
  • 舌が動く/動かない
  • 舌の色は赤い/ピンク/白い/紫konoko_04
  • 歯・歯茎
  • 歯石・歯垢
  • 歯茎の色:赤い/ピンク/白い/黒い
  • デキモノの有無

 

何か変化を見つけましたか?

変化は気づいたけど、この程度で病気が分かるの?これが分かるとどんな病気を発見できるの?と思っていること思います。

実は、獣医師の診察でも同様の手順(全体から各器官に)で病気と原因部位を絞り込んで行きます。

眼で見た変化で発見できる可能性がある病気(顔・頭部)

  • 耳の病気(頭の傾き、耳の変化、眼の動き・瞬き等)
  • 眼の病気(眼の変化、鼻の変化)
  • 神経の病気(頭の傾き、耳の変化、眼の動き・瞬き等)
  • 循環器・呼吸器の病気(舌の色)
  • 歯の病気(顔の腫れ)
  • 腫瘍(腫瘤の存在、皮膚や粘膜の構造・色の変化)
  • 皮膚の病気(皮膚や粘膜の構造・色の変化)
  • 内蔵や免疫の病気(眼の変化、皮膚や粘膜の構造・色の変化)

顔だけ観察しても、色々な病気を発見できるチャンスがあることをお分かり頂けると思います。

また、いつもはできるのに見ようとするだけや触ろうとするだけで嫌がったり、怒ったりする場合は何かしら問題を抱えていることが多いため、かかりつけの病院で相談されることをオススメします。

例:症状が多岐にわたる耳の病気
頭部の病気は各器官の距離も近く密接に絡み合っているため、症状と一見関係のない部分が原因のことがあります。特に耳の病気は顕著です。

先日、ご飯を食べるときに口をあけるのを痛がるというワンちゃんが来院しました。当然飼い主さんは口の中が原因(虫歯ですか?歯周病ですか?と尋ねられます)と思っていらっしゃいます。

しかし口の中は異常ありません。身体検査で耳を検査すると耳道が腫れて膿性の分泌物で満たされていました。詳しく検査を進めて中耳炎と診断しました。中耳の位置は顎関節の位置の隣で顔面神経も接していますので、一見関係のない症状が出たのです。

この他にも、耳の病気は瞬きの回数や眼の閉じ方が変化するので注意が必要です。

イラスト:Mayumi Mori

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