
Vol.1 人はなぜ動物を求めるのか?ー犬と人と-共に生きる
人はなぜ動物を求めるのか?
近年、多くの人が伴侶(コンパニオン)として動物を家庭に迎え入れています。
犬と猫の飼育頭数の合計は実に2000万頭弱にのぼるといわれ、この数字は15才未満の人口約1600万人を上回り、世帯数に換算すると実に4世帯に1世帯の割合で犬、猫もしくは両方を飼育している計算になります。
人間が動物を可愛がる対象として飼うようになったのはそれほど新しいことではありません。
北イスラエルのアイン・マラハという約12000年前の遺跡からは子犬を女性が抱くような形で埋葬されて見つかったことから、当時から犬と人の間に情緒的なつながりがあったと考えられています。
では、なぜこれほどまで多くの人たちが動物を求めるのでしょうか?残念ながら現在のところ、明確な科学的根拠はほとんどありません。しかしながら、人が動物を求める理由については3つの要素をもとに説明されています。
ペット飼育を紐解く三つの要素
その1:バイオフィリア-「自然」への愛
バイオフィリアとは人間には自然や動物に対する関心や愛情が本能的として遺伝子にも組み込まれているという説です。
例えば雄大な自然を前にした時に受ける感動や、清々しい深緑の森に包まれ癒されたといった感覚がそうと言えるでしょう。この感覚は手つかずのありのままの大自然である程に強くなるのではないでしょうか。
そして動物は人間のように自分を飾らない、まさに自然体そのものの存在です。人はそこに「ありのままの生命」ひいては「自然」を感じ、同様に感動や癒やしを求めるのです。
個人的には自然とのふれあいが減ってきている現代人だからこそ、以前よりも家庭内で「自然」が求められ、結果的に動物の飼育が一昔前と比べ増えたのではないかと思います。
その2:ソーシャルサポート-社会とのつながり
どんなに経済的に豊かであっても孤独であることは非常に辛いことです。
なぜなら、社会性をもつ動物である人間は誰かとつながっていたいと思う生き物だからです。
ソーシャルサポートとは周囲から受ける物質的・心理的支援のことをいいます。
辛いことがあっても周囲のサポートを受けることで前向きな気持になれたり、ストレスにうまく対処できる事はありませんか?
我々は身近なペット達のことも社会の一員と考え、「心の支え」としているのです。
また、ペットは飼い主が世話をしなければ死んでしまいます。世話を通して自分が他者に必要とされていると感じることは自分が社会の一員であると実感させてくれることにもつながります。
その3:アタッチメント-絆
アタッチメントとは動物が示す特定の個体に対して形成する、情緒的な結びつきのことをいいます。いわゆる、「絆」です。。
人も動物も生まれたときはか弱い存在であり、母親をこころのよりどころとすることで安心感を得ることができます。母親も子供から求められることで、この子を大切にしたい、面倒をみたいと思います。
このように誰かに「愛情を注ぎたい」という欲求は動物がもともと持っている本能なのです。
昔であれば孫や地域コミュニティーの子どもたちのお世話をすることでこの欲求が満たせていましたが、核家族化が進む現代社会ではそれも難しくなっています。
ですから、動物を家族の一員として迎え入れ、育て養いたいと思うのです。
余談になりますが、昨春「犬と飼い主が見つめ合うことで愛情ホルモンが増加する」といった研究が話題になったのを覚えていらっしゃいますか?
実は僕は学生時代にこの研究の一部に関わっていました。
この研究では、犬と人の間で互いにオキシトシンというホルモンが作用することによって、異種間でも人の母子間のような絆を結べるということが科学的にも明らかとなりました。
これら三つの要素が組み合わさることで人間は動物とのつながりを求め、その結果、本能的な欲求が満たされると考えられています。
そして人はペットとの生活に癒しや安らぎ、潤いを感じるなど彼らから素晴らしい恩恵を受けているのです。
関連カテゴリ:犬の習性
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