ワイルドな虎毛が魅力的な甲斐犬。生涯で主人はただ一人、という意味の「一代一主」の犬といわれます。硬派な忠犬に憧れて迎えた方もいることでしょう。私もその一人です。愛犬は連載コーナー【犬と好奇心を連れてゆく】に登場する、ジュウザ。
 
生後2ヶ月で我が家にやってきてから、早13年!長いようで短い期間ですが、たくさんの思い出を重ねてきました。
 
甲斐犬と、「甲斐犬らしくない」といわれることもあるジュウザの特徴を紹介したいと思います。

 
飼い主は見た!犬猫生態図鑑 甲斐犬1 | Fanimal(ファニマル)
 

甲斐犬の特徴

甲斐犬は山梨県の山間部で、古くから猟犬として活躍してきた犬種です。犬籍を管理する甲斐犬愛護会では、「性徴良く表し、素朴にして沈着勇猛性を備え、行動軽快にして、俊敏迫力があり特に帰家性強く、一代一主的傾向が強い」と定めています。
 
わかりやすく解釈すると、「オスとメスの特徴をはっきりと表し、自然に落ち着きと勇ましい強さを備え、行動は身軽で素早く迫力があり、特に家へ戻る性質が強く、生涯で一人の主人を定める傾向が強い」というようなことです。
 
特徴的な毛色は「虎毛」と呼ばれています。日本犬の中でも「虎毛が必須」と定められているのは甲斐犬だけ!黒色と茶褐色によって構成され、3種類に分けられます。
 

  1. ・黒虎毛:黒色の地に茶褐色が入っている色
  2. ・中虎毛:黒色と茶褐色の色合いが同程度の色
  3. ・赤虎毛:茶褐色の地に黒色が入っている色精悍な印象の黒虎毛が人気で、頭数も多い毛色です。鮮やかな色の中虎毛と赤虎毛を好む方も。猟師の中には、野山では茶褐色が多い虎毛が保護色になって獲物に気づかれにくいと考え、中虎毛や赤虎毛を好む方もいます。

 
愛犬のジュウザは赤虎毛です。草むらや林に入ると、確かに見えづらくなります。夜の散歩は明るいところを歩いています!体型は、がっちりした猪型とスマートな鹿型の2種類。ただし、現在は大半が鹿型です。
 
体高(地面から肩の高さまで)は、40〜50cm。小型犬の柴犬より大きく、中型犬の紀州犬より小さいサイズです。
 
甲斐犬を含む日本犬の多くは、自然が多い地域出身の「山出しの犬」。洋犬のように計画的なブリーディングの歴史が浅く、個体差も見られます。
 
顔の特徴は、他の日本犬よりやや大きめの立ち耳と、山梨県原産のぶどうのような目の色です。毛色によって目の色は濃淡があり、赤虎毛のジュウザは明るめです。
 
甲斐犬のしっぽは、くるりと巻いた「巻尾」と、すっと立った「差尾」です。他の日本犬に比べて差尾の犬の割合が多い傾向にあります。愛好家の中には、太くまっすぐ立つ差尾を特に好む方もいます。
 
ジュウザは差尾ですが、巻きそうで巻かないフニャッとした感じです。
 
身体能力としては、優れたジャンプ力にも要注目です。後ろ足の関節である飛節(人のかかとにあたる)の発達は日本犬随一!険しい山間部で鍛えられ、発達してきたのでしょう。この特徴が身軽で素早い動きを生み出しています。
 
ジュウザも飛節がよく発達していて、若い頃は180cmの塀に飛び乗ることができました。加えて木に登ることもでき、「猫みたい」と言われたこともあります。

飼い主は見た!犬猫生態図鑑 甲斐犬2 | Fanimal(ファニマル)
 

甲斐犬の歴史

甲斐犬のルーツは、山梨県芦安村(現南アルプス市)、西山村(現南巨摩郡)の山間部にいた虎毛の猟犬です。
 
1920年代、日本古来の犬と輸入された洋犬による雑種化が進み、それを危惧した有志の日本犬保存活動により発見されました。甲斐犬を含む日本犬(柴犬、秋田犬、紀州犬、四国犬、北海道犬、越の犬)がこの活動によって保護され、国の天然記念物になりました。甲斐犬は秋田犬に次いで、1934年1月22日に指定されています。
 
日本犬の登録頭数は、人気の柴犬が大半を占めます。とはいえ、甲斐犬も熱心な愛好家に支えられ、越の犬のように血統が途絶えることなく、今日まで歴史を刻んでいます。
 
現在、甲斐犬の犬籍を管理して血統書を発行しているのは、主に3団体。甲斐犬愛護会が最も多く、次いで日本犬保存会、ジャパンケネルクラブです。

 

甲斐犬の性格

活発で好奇心旺盛です。先に紹介したとおり、忠犬らしさを感じられる犬種です。
 
ジュウザは忠犬というより、甘えん坊でヤキモチ焼き。しかし、プードルのように「かまって〜!」とかわいらしく愛想を振りまくタイプではありません。甘えたいときは、「家政婦は見た」のように物陰からじーっと静かに視線を送ります。
 
その一方、私が別のわんちゃんをなでているときには派手にヤキモチを焼き、「ウオオオ!」と遠吠えでアピール。
 
ワイルドなのに飼い主に一途なところがかわいいのです。

 
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甲斐犬と生活するうえで気を付けたいこと

体力旺盛な犬種なので、毎日の散歩は必須といえます。
我が家の場合、目安は1日2回、合計6kmほどです。
 
10km以上散歩したこともありますが、若い頃のジュウザはへっちゃらでした。一緒にのんびり歩くだけでなく、活発な運動を取り入れて体力を上手に発散させることが大切です。
 
ボール遊びは体力発散にぴったり!飼い主さんとの距離が近い引っ張りっこ遊びは、コミュニケーションにもなります。
 
好奇心を満たすために、拾い食いの心配がない場所で自由に探索させてあげてもいいでしょう。
 
伸縮リードやロングリードを練習して使えるようになれば、わんちゃんが長い距離を動くことができるので、効率よく運動させることができます。飼い主さんの歩く時間も減らせますね。
 
毎日10kmは大変ですよ……。ジュウザは動くものを追いかけるのが好きだったので、松ぼっくりを転がして遊ばせることもありました。噛む力が強いので、オモチャを買ってもすぐに壊れてしまうからです。松ぼっくりなら惜しくありません(笑)。
 
大雨の場合は散歩を休み、知育玩具で遊ばせていました。濡れた後、乾かすのが大変なので……。散歩は必須ですが、たまになら休んでもいいかなと思います。
 
春と秋は「換毛期」呼ばれ、犬の衣替えの季節です。抜け毛が増える傾向があるので、しっかりブラッシングすることが大切です。甲斐犬の毛質は表毛(オーバーコート)と綿毛(アンダーコート)からなる、二重被毛(ダブルコート)。
 
表毛は硬くまっすぐで、綿毛は柔らかく密集しています。綿毛は体温調節の役割があり、春には抜けて暑い夏に備え、秋以降は冬に備えて生えるというサイクルです。
 
我が家ではゴムブラシと静電気防止コームを使っていました。どちらも地肌にソフトにあたり、マッサージ効果を期待できるのでは、と思いました。

 

甲斐犬がかかりやすい病気

計画的なブリーディングの歴史が浅いせいか、犬種として特に注意が必要な病気はありません。体質によるアレルギー症状、加齢によるさまざまな内臓疾患には注意が必要です。
 
早期発見、早期治療ができるように、定期的な健康診断を心がけましょう。

 
飼い主は見た!犬猫生態図鑑 甲斐犬4 | Fanimal(ファニマル)
 

うちの甲斐犬

甲斐犬は警戒心が強く、人、動物、物事などにうなったり吠えたりすることがあります。
子犬の頃に社会化を行うことが重要です。社会化とは周囲のさまざまなことを経験して慣れ、対処法を学び、許容範囲を広げること。
 
社会性を身につければ、過剰な反応が減っていきます。
 
実は、飼い主さんに対してうなったり吠えたりすることもあります。ジュウザも生後半年頃までは暴れん坊将軍でした。しかし、「家族の上位を狙っている」と解釈するのは誤りです。
 
ということを、当時の私はわかっていなくて、解決までずいぶん回り道をしました……。
 
困ったことがある場合は、理由に合わせて対処することが解決の早道。専門家に相談しましょう!甲斐犬に限りませんが、接触が苦手なタイプもいます。
 
全身を触れるように練習しておくと、健康チェックに役立ちます。
 
ジュウザは子犬の頃、頭をなでると嫌がって振り払うようなタイプでした。
少しずつ練習を重ね、高齢になった今、食事の介助や洋服の着脱ができるように。
 
接触に慣らすことで、健康寿命を延ばせるのではないかと思います。自立心が強い傾向があります。ジュウザは「こっちおいで」と呼びかけても、気分次第で「後でもいい?」と言うタイプ。
 
かつての私は「今でしょ!」と言っていましたが、シニアになってのんびりしてきたジュウザに「後でしょ!」と言われると、まぁいいかと思うように。
 
分かれ道で「どっち行く?」と聞いて、「こっちにする!」と答えるやりとりもできるようになりました。長く暮らしていると、犬というよりパートナーのように思えてくるんですよね。
 
指示にキビキビ従う犬にも憧れますが、私とジュウザの場合、折り合いをつけながら暮らすことも楽しみの一つ。
シニアになってからはその思いがいっそう強くなりました。みなさんにとっても、甲斐犬はきっと良きパートナーになってくれるはずです。

 
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