前回、日本の現状から、社会生活に適応するために、規律や礼儀作法など、慣習に合った立ち振る舞いを身につけさせる「しつけ」の必要性についてお伝えしましたが、実は法律の中にも飼い主には「動物の適正な取扱い」としていわゆる「しつけ」に関する記述が出てきます。
 
犬と人と-共に生きる しつけ1 | Fanimal(ファニマル)
 
動物の愛護及び管理に関する法律(いわゆる動愛法)の第一章、第二条では「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」とされており、最も人間に身近な動物である犬は人間社会で共生する「配慮」である「しつけ」が求められるのです。
 
そして飼い主には「習性を考慮して適正に取り扱う」ことが求められます。
 
つまり、飼い主は大前提として犬の習性を理解していないといけないのです。
 
犬と人と-共に生きる しつけ2 | Fanimal(ファニマル)
 

「吠え」から考える犬の習性

犬の習性については「吠え」を例に考えてみましょう。
 
犬は吠える習性を持った生き物ですが、人と共生する以上、そのすべて受け入れることはできません。
 
吠える理由は様々ありますが、例えば来客や物音に対する吠えの場合、多くの場合は自分の縄張りに人間を含めた他個体が侵入する事に対し警戒して吠えます。
 
この時、犬自身が家の中全てが縄張りだと思っていれば侵入口である玄関付近に誰かが来るだけで吠えるでしょう。
 
人の往来が見えたり、物音が入って来やすい道路に面した窓付近も警戒の対象になりやすい場所の一つです。
 
また、家の中にそもそも安心できる休息スペースがない場合、安全な場所がないため侵入者を連想させるものにより過敏になり、吠えてしまいます。
 
これは縄張りを持つ犬という動物の持つ習性が引き起こす問題ですが、解決するには一般的にクレートと呼ばれる犬専用の休息場所を用意し、中に入って静かに休む練習をします。
 
クレートは狭くて犬にとってストレスになるのではと思われる方もいますが、犬はもともと休息場所に暗くて狭い場所を選ぶ習性を持った動物です。
もちろん練習の必要はありますが、家の中で自由に休ませるよりもクレートトレーニングをしたほうが安心して休息行動を取ることができます。
 
つまり、来客や物音に吠えなくするしつけの際、考慮すべき犬の習性は「縄張りを守ろうとする」というものですが、「休息場所(クレート)があるか?」、「クレートの設置場所は適切か?」、「クレートに入るトレーニングをしているか?」、「見知らぬ人に慣らす社会化トレーニングができているか?」、「その他の本能的な欲求が(運動欲求など)が満たせているかどうか?」といった環境を含めた様々な要素が必要になります。
 
犬と人と-共に生きる しつけ3 | Fanimal(ファニマル)
 

しつけ=指示で制御ではない

よく、「しつけ=他人に迷惑をかけないように教育すること」と表現されますが、単純に迷惑をかけないだけであれば「侵入者が嫌いで吠えたくてしょうないが、飼い主がフセ、マテをさせて吠えさせない」という考えもOKになります。
 
ただし、これはとても危険な考えで、何でもかんでも指示でコントロールするということは、時として習性を無視し、過度なストレスを与えることにつながりますし、人がいないとできないといったことになってしまいます。
 
本当に犬にとって良いことは環境づくりも含め、誰が家に入ってこようがリラックスしていられることです。
 
例えば、人間も休息(睡眠)を取る生き物ですが、渋谷のスクランブル交差点で熟睡しろと言われても無理ですよね?
 
つまり、指示で行動を制御するだけではなく、習性を考慮して与えられた環境を苦なく受け入れるようにする、また、その環境で犬が本能を満たせるよう、本能的な行動の表現方法を教えていくことが「しつけ」となるわけです。
 
犬と人と-共に生きる しつけ4 | Fanimal(ファニマル)
 
犬の習性に関する情報は本やネットなど溢れかえっていますが、このところ犬に関する研究は飛躍的に進歩しています。そしてその習性が科学的に明らかになるにつれ、過去の定説はどんどん覆されているのです。
 
もう一度、犬がどんな習性をもった動物なのか考えてみるのもいいかもしれません。
 

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